加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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仮差押えの時点で土地及び地上建物の所有者が同一であれば法定地上権が成立することを認めた最高裁判例

最高裁は,12月1日,地上建物に対する仮差押えが本執行に移行して強制競売手続がされた場合において,仮差押えの時点で土地及び地上建物の所有者が同一であったときは,差押えの時点で土地が第三者に譲渡されていたとしても,法定地上権が成立するとの判断を示しました。

今回問題となったのは,土地及びその上の建物の所有者が同一の場合において,当該土地または建物の差押えがあり,その売却によって所有者を異にするに至ったときに,建物に法定地上権が設定されたものとみなす民事執行法81条の規定です。本件は,建物が仮差押えされた時点では,土地及び建物の所有者は同一でしたが,本差押えより前に土地が第三者に譲渡されたため,本差押えの時点では,土地及び建物所有者が異なっていました。

このような本件について最高裁は,法定地上権の成立を認め,その理由を,

「民事執行法81条の法定地上権の制度は,土地及び地上建物が同一の所有者に属する場合には,土地の使用権を設定することが法律上不可能であるので,強制競売手続により土地と地上建物の所有者を異にするに至ったときに地上建物の所有者の ために地上権が設定されたものとみなすことにより,地上建物の収去を余儀なくされることによる社会経済上の損失を防止しようとするものである。そして,地上建物の仮差押えの時点で土地及び地上建物が同一の所有者に属していた場合も,当該仮差押えの時点では土地の使用権を設定することができず,その後に土地が第三者に譲渡されたときにも地上建物につき土地の使用権が設定されるとは限らないのであって,この場合に当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続により買受人が取得した地上建物につき法定地上権を成立させるものとすることは,地上建物の収去による社会経済上の損失を防止しようとする民事執行法81条の趣旨に沿うものである。また,この場合に地上建物に仮差押えをした債権者は,地上建物の存続を前提に仮差押えをしたものであるから,地上建物につき法定地上権が成立し ないとすれば,不測の損害を被ることとなり,相当ではないというべきである。」

としています。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/306/086306_hanrei.pdf

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