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【裁判例】最高裁、定額残業代の法定時間外手当該当性につき判断

 いわゆる定額残業代制が採用されていた事案において、当該定額残業代が労働基準法37条の要求する残業代の支払いに該当するのか否かが争われた事案につき、最高裁が、原審の判断を覆し、残業代の支払いが適法になされていたとして、事件を原審に差し戻しました(平成30年7月19日最高裁判所第一小法廷判決)。

 原審と最高裁の判断が分かれた理由は、定額残業代の支払いが法定の残業代の支払いといえるためにいかなる条件が必要であるのかという点についての判断の相違にあります。

 原審は、①定額残業代を上回る残業代が発生した場合に、労働者がそれを認識して直ちに支払いを請求することができる仕組みが備わっていること、②当該仕組みが雇用主により誠実に実行されていること、③基本給と定額残業代とのバランスが適切であることが必要であるとしました。

 これに対し、最高裁は、①雇用契約等の記載内容、②労働者への説明内容、③実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮する必要があるとしつつ、原審の要求する条件は必須のものではないとしています。

 その上で、最高裁は、本件においては、①雇用契約書等において、残業代といえるか否かが争われている当該手当(定額残業代)が、定額残業代である旨が記載されていたこと、②労働者との間で交わされた確認書においても、同様の記載があったこと、③当該手当に相当する労働時間と、実際の残業時間とが大きく相違していないことを認定し、当該手当が残業代として支払われたものであると判断しました。

 本判決を踏まえれば、定額残業代を採用する際には、原審の要求するような「仕組み」までは必要ではないものの、少なくとも、①雇用契約書等での明示、②労働者への説明(の証拠化)、③実際の残業時間とのバランスの3点については注意を払う必要があるものといえます。

(最高裁HP)

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/883/087883_hanrei.pdf