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オリンパス事件(大阪弁護団訴訟),判決言い渡し

 オリンパスの粉飾決算に伴う株価の下落により,損害を受けた株主らを原告となり同社に損害の賠償を求めた訴訟につき,本日,大阪地裁代20民事部(野田恵司裁判長)は,同社の責任を認め,2085万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

 同判決では、当時の代表取締役兼社長執行役員マイケル・ウッドフォード氏を解職した平成23年10月14日以降の株価変動は、一連の粉飾決算と相当因果関係があると認定され、取得価格から売却価格を差し引いた金額のうち8割が損害額に当たるなどと判断されています。

 大阪弁護団として本事件に携わってきた我々としては,今回の判決は,(一部を除き)概ね評価できる内容のもの,と考えています。

 上記判決の主要部分を,以下簡単にご紹介いたします。

争点①:損害論

 「 本件は,原告らが,各株式取得時点において,オリンパスの株式を取得するために本件虚偽記載がなかった場合の株式の価値を超える余分な金銭等を支出したことによって損害を被ったといういわゆる高値取得ケースである。・・・高値取得ケースにおける株主の損害額は,当該株主が現に支出したものを前提に考えるべきであり,当該株式取得のために実際に支出した金銭等の額(a)と虚偽記載がなかったとした場合の取得時点での当該株式の価値(b)との差額が損害となるというべきである(以下,(a)-(b)の額を「高値取得価額」という。)。 」

 「 高値取得価額を計算式で表すと,以下のとおりとなる。 

 当該株式の高値取得価額 = 支出した金銭等の額(a)-{取得時点での市場価額-(取得時点での嵩上げ額+虚偽記載を有する株式を取得したことによる価額下落リスクの評価額)}(b) 」

争点②:虚偽記載と相当因果関係のある株価下落の始期について

 「 一見すると,ウッドフォードの解職は,本件虚偽記載の公表前の事情であるから,本件虚偽記載と無関係な要因であるようにも思える。しかし,・・・被告〔オリンパス。以下同じ〕の取締役会は,ウッドフォードからの上記疑惑の指摘を受けて,本件虚偽記載の発覚を防ぐ目的でウッドフォードを解職したものと推認することができる。よって,ウッドフォードの解職報道による株価下落は,本件虚偽記載公表前であっても本件虚偽記載と相当因果関係のある株価下落に含めることができる。 」

争点③:嵩上げ額及びリスク部分の推計方法

 「 ①被告は,・・・本業は順調であって,高い技術力を有する優良企業であると認識されていたこと,②・・・本件虚偽記載は,・・・被告の本業での利益水準や業績動向に基づく市場の評価を誤らせるようなものではなかったこと,③にもかかわらず,本件虚偽記載の内容や規模に加えて,ウッドフォードの解職が大衆の関心を惹くものであったことも相まって,・・・株価が・・・大きく下落したことなどを綜合考慮すると,本件虚偽記載と相当因果関係のある株式下落部分には,株式取得時点で想定されていた価格下落リスクを超える部分も一定程度含まれるものと認められ,その割合を2割とみて,これを控除するのが相当である。したがって,本件における嵩上げ額及びリスク部分は,本件虚偽記載と相当因果関係のある株価下落部分の8割に相当する額であると認定するのが相当である。 」