加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「AIツール導入にあたり企業が策定すべきAIポリシーとは」⑦ 著作物を生成AIに入力するリスクと生成コンテンツ利用に関する社内規程整備のポイント

1.はじめに

 前回は、開発情報や営業秘密情報、第三者から提供を受けた秘密情報を生成AIに入力する場面を取り上げ、情報漏えいや営業秘密管理、契約上の義務との関係で、どのようなリスクが生じ得るのかを見てきました。生成AIの利用は便利である一方で、入力する情報の内容によっては、企業の重要な利益に直接関わる問題を生じさせます。

 もっとも、生成AIの利用に伴うリスクは、秘密情報の入力場面に限られません。企業においては、広報、広告、営業資料、ホームページ、SNS運用などの場面で、画像や文章を生成AIに作成させたいというニーズも高まっています。そこで今回は、著作物を生成AIに入力する場面や、生成されたコンテンツを企業が利用する場面について見ていくことにします。

2.想定される事例

 例えば、企業の広報担当者が、自社のホームページやSNSで使用するイメージキャラクターを作成しようとして、インターネット上で見つけた人気イラストレーターの漫画風画像を生成AIに入力し、「この雰囲気に近いキャラクターを作ってほしい」と依頼したとします。あるいは、他社の商品パッケージや広告デザインを参考画像として読み込ませ、これに似た販促素材を作ろうとする場面も考えられます。

 担当者としては、元画像をそのまま使うのではなく、あくまでAIで新しいものを作っているのだから問題ない、と考えるかもしれません。また、AIが生成したものである以上、自社で自由に使えるだろうと受け止めてしまうこともあり得ます。

 しかし、著作物を生成AIに入力する行為や、AIが生成したコンテンツをそのまま対外的に利用する行為には、権利侵害や権利化の困難、さらには企業の信用に関わる問題が生じることがあります。生成AIの利用が手軽であるほど、「どこまでが許され、どこからが危ないのか」が見えにくくなりやすい点に注意が必要です。

3.どのようなリスクがあるのか

 この場面でまず問題となるのは、著作権との関係です。インターネット上に公開されている画像やイラストであっても、当然に自由に利用してよいわけではありません。特に、他人の著作物をそのまま、又はそれに近い形で生成AIに入力し、その結果を事業活動に利用する場合には、入力段階と出力段階の双方で問題が生じる可能性があります。

 まず入力段階では、著作物をそのまま生成AIに読み込ませること自体が問題となり得ます。企業内では、「参考にしただけ」「分析させただけ」という意識であっても、その利用目的や態様によっては、適法な利用として整理できないことがあります。特に、対外的な成果物の作成を目的として他人の著作物を取り込む場面では、慎重な対応が必要です。

 次に出力段階では、AIが生成したコンテンツが元の著作物と似たものになる可能性があります。企業としては「AIが作ったのだからオリジナルだ」と考えたくなるところですが、見た目や表現上の特徴が元の著作物と近ければ、第三者から見て権利侵害を疑われることがあります。実際には、元画像を直接使っていなくても、依拠や類似が問題となる場面は十分にあり得ます。

 また、生成されたコンテンツを自社のものとして保護しようとする場面でも注意が必要です。たとえば、AIで作成したキャラクターやロゴをそのまま使おうとしても、人の創作的関与が乏しい場合には、自社の成果物として安定的に位置付けにくいことがあります。つまり、他人の権利を侵害するリスクがある一方で、自社として十分な保護を受けにくいという、二重の問題が生じ得ます。

 さらに、こうした場面では信用やレピュテーションの問題も無視できません。仮に法的な紛争に直ちに発展しないとしても、「他人の作品に似た画像を企業が使っている」「AIで安易に作ったコンテンツを公式に掲載している」と受け取られれば、企業の姿勢そのものに疑問を持たれることがあります。特に、広報や広告の場面では、権利問題と同時に企業ブランドへの影響も考えなければなりません。

 このように、この類型では、入力時の著作物利用、出力結果の類似性、生成物の保護可能性、そして対外的信用という複数の問題が重なります。生成AIを用いたクリエイティブ制作は魅力的である一方、企業利用の場面では慎重なルール整備が必要です。

4.社内規程整備のポイント

 このようなリスクに対応するためには、まず入力段階のルールを明確にすることが重要です。具体的には、他人の著作物をそのまま生成AIに入力しないこと、権利関係が不明確なネット上の画像やイラスト、写真等を安易にアップロードしないことを、社内規程やガイドラインにおいて明示する必要があります。単に「著作権に注意する」と定めるだけでは足りず、何を入力してはいけないのかを具体的に示すことが重要です。

 次に、生成されたコンテンツの利用範囲を明確にしておくことも必要です。たとえば、生成AIで作成した画像や文章を、直ちにホームページ、広告、SNS、商品パッケージ等に使用してよいのか、それとも社内検討資料にとどめるべきなのかを整理しておかなければ、現場の判断はばらつきます。特に対外公表を伴う利用については、一定の確認手続を経る運用が望ましいでしょう。

 また、生成物については、類似性や依拠性の確認体制を整えることも重要です。現場担当者だけでは判断が難しい場合も多いため、広報部門、法務部門、又は外部専門家の確認を経る仕組みを設けることが考えられます。少なくとも、商用利用や公表の前に「本当にそのまま使ってよいか」を見直す機会を制度として設けておく必要があります。

 さらに、利用する生成AIサービスの規約確認も欠かせません。入力データや生成物の取扱いがサービスごとに異なる以上、企業としてどのサービスを前提に利用を認めるのかを整理しなければなりません。担当者が便利さだけでサービスを選ぶ状態では、入力情報の扱いも、生成物の利用条件も統制できなくなります。

 加えて、生成物を企業の成果物として利用する場合には、人がどのように関与したのかを一定程度記録することも有益です。どのような指示を出し、どのような修正を加え、最終的にどのような判断を経て利用に至ったのかを残しておくことで、後から利用経緯を確認しやすくなります。特に、対外的に利用するコンテンツについては、作成過程の記録が全くない状態は望ましくありません。

 最後に、外部発信に関する社内ルールとの連携も重要です。生成AIに関する規程だけを独立して設けても、ホームページ掲載、広告審査、SNS投稿、販促資料作成といった既存の承認フローと結びついていなければ、実際の運用は不十分になりがちです。生成コンテンツの利用も、企業の対外発信管理の一場面として位置付ける必要があります。

5.おわりに

 著作物を生成AIに入力する行為や、AIが生成したコンテンツを企業が利用する行為には、著作権との関係、生成物の利用可能性、そして企業の信用に関わる問題があります。現場では「AIで作ったものだから使ってよい」と受け止められやすい一方で、実際には入力段階から出力利用まで、慎重な判断が必要となる場面が少なくありません。

 だからこそ、企業としては、他人の著作物を安易に入力しないというルール、生成物の対外利用に関する確認手続、利用サービスの選定、そして外部発信管理との連携を、社内規程や運用の中で整備しておく必要があります。生成AIの活用を進めるためにも、「何を参考にしてよいのか」「何をそのまま使ってはいけないのか」を全社で共有しておくことが重要です。

 生成AIは、創作や広報の場面でも大きな可能性を持つ一方、その利用の仕方を誤れば、権利面でも信用面でも企業に大きな影響を及ぼし得ます。だからこそ、便利だから使うのではなく、安全に使える状態を整えたうえで利用するという姿勢が求められるといえるでしょう。

加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に企業法務、企業の内部統制構築(AIガバナンス)、AIポリシー・AIガイドライン等のAIツール導入・利用に関する社内規程整備のご相談・ご依頼をお受けしております。

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