加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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ステマ規制の導入(令和5年10月1日より施行)【第2回】

 第1回ではステマ規制の導入と関連する法令について解説しました。

 第2回からは運用基準について解説します。

●「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」と運用基準

 ステマ規制は、外形上第三者の表示に見えるものが事業者の表示に該当する場合を前提としており、形式的な表示主体が第三者(例えばインフルエンサー等)であっても、客観的な状況に基づいて、第三者の自主的な意思による表示内容と認められないような場合には事業者の表示としてステマ規制の対象となります。

 運用基準では①事業者が自ら行う表示、②事業者が第三者をして行わせる表示の2パターンに分けて整理されています。

●事業者が自ら行う表示

 事業者自身が行う表示は、そもそもステマ(第三者の表示のように誤認が生じる表示)とはならないのではないかという疑問を抱く方もおられるかもしれませんが、ここでは「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」をいい、従業員のようないわば事業者側の立場の者が第三者の体で商品等に関し表示を行うことを禁止しようとするものです。

 もっとも、あらゆる従業員が自社等の製品について何等かの表示を行えば、その表示が全てステマに該当するかというと、そうではありません。

 運用基準では、販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等の販売を促進したい立場の者が、その販売を促進するための表示を行った場合には事業者が自ら行う表示に該当すると整理されており、規制の範囲に限定を加えています。

 仮に従業員等であっても、販売等に何ら関与していない者で、販売促進の目的なく行った表示に関しては事業者が自ら行う表示に該当しないことになります。その結果、ステマ規制は適用されません。

●事業者が第三者をして行わせる表示

 運用基準によると、事業者が第三者をして行わせる表示については、まず以下の類型に分けて検討する必要があります。

① 事業者が第三者へ依頼するに当たり表示の内容について明示的に依頼・指示を行っている場合

② 事業者が第三者へ依頼するに当たり表示の内容について明示的に依頼・指示を行っていない場合


 表示の内容について明示的に依頼・指示を行っている場合、その表示は第三者の自主的な意思によるものではなく、事業者が第三者の表示内容の決定に関与していると評価できることから、事業者自身による表示と同様に考えられます。

 したがって、第三者による表示であると誤認するような表示であれば、ステマに該当し、禁止される表示となります。

 以上に該当する表示として、運用基準では次の例を紹介しています。

(表示の内容について明示的に依頼・指示を行っている例)

① 事業者が第三者に対して当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合

② ECサイトに出店する事業者が、いわゆるブローカー(レビュー等をSNS等において募集する者)や自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合

③ 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイターに委託して、自らの商品又は役務について表示させる場合

④ 事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合


 他方、表示の内容について明示的な依頼・指示のない場合であっても、事業者と第三者との関係性等から、事業者の表示と評価すべきものもあるため、運用基準では一定の場合に事業者の表示に該当することを認めています。

 この点については第3回で解説します。

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弁護士浅井佑太

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