加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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ステマ規制の導入(令和5年10月1日より施行)【第4回】

 ステマ規制は、①「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であること、②「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められる」ことの2つの要件を満たしたものに課せられる規制であることを紹介し、第3回までの間では、①の要件に該当する場合がどのような場合であるかを紹介しました。

 以下では、もう1つの②「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められる」という要件について解説します。


●基本的な考え方

 ステマ規制は、一般消費者が第三者の表示であると誤認してしまう表示を規制するものです。

 したがって、「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難である」かどうかに当たっては、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになります。


●一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となってないもの

 運用基準では、事業者の表示であることが記載されていないものと事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの、という2類型に分け、次のように例を挙げています。

(事業者の表示であることが記載されていないもの)

① 事業者の表示であることが全く記載されていない場合。

② 事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う際に、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していない場合。

(事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているもの)

① 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合。

② 文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。あるいは、文章の冒頭に「これは第三者としての感想を記載しています。」と記載しているにもかかわらず、文中に「広告」と記載し、事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。

③ 動画において事業者の表示である旨の表示を行う際に、一般消費者が認識できないほど短い時間において当該事業者の表示であることを示す場合(長時間の動画においては、例えば、冒頭以外(動画の中間、末尾)にのみ同表示をするなど、一般消費者が認識しにくい箇所のみに表示を行う場合も含む。)。

④ 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使用する場合。

⑤ 事業者の表示であることを一般消費者が視認しにくい表示の末尾の位置に表示する場合。

⑥ 事業者の表示である旨を周囲の文字と比較して小さく表示した結果、一般消費者が認識しにくい表示となった場合。

⑦ 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合。

⑧ 事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(例えば、SNSの投稿において、大量のハッシュタグ(SNSにおいて特定の話題を示すための記号をいう。「#」が用いられる。)を付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)。


 このような例を見ると、例えば、SNS等で「PR」等として記載していても、文字のフォントを小さくし、あるいは灰色等の見えにくい色を使用している場合のようなケースでは、上記⑦に該当し、事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものと評価されてしまうリスクは否めませんので注意が必要です。


●一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているもの

 運用基準では、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているものについても紹介しており、事業者の表示であると評価されそうなものについては、下記の例に沿って対応を行うことが求められます。

① 「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合。

② 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合。

③ 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合。

④ 事業者の協力を得て制作される番組放送や映画等において当該事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合。

⑤ 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示を行う場合。

⑥ 商品又は役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示を行う場合。

⑦ 事業者自身のウェブサイト(例えば、特定の商品又は役務を特集するなど、期間限定で一般消費者に表示されるウェブサイトも含む。)における表示を行う場合。

⑧ 事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合。

⑨ 社会的な立場・職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合。

 上記⑦については、事業者自身のウェブサイト上における表示の場合、その閲覧者は通常事業者が表示を行っていると認識するものであることが前提とされています。

 もっとも、口コミ等の一般消費者の声を届ける項目を設けたり、専門家の客観的な意見を記載する項目を設けるなどのウェブページもありますが、こうした場合には、この部分については第三者の表示と誤認させる場合があります。

 したがって、運用基準においては、実際には事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合やそもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合には、上記第三者の表示について、事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならないとされていることには注意が必要です。

 この場合には、「弊社から●●先生に依頼をし、コメントを編集して掲載しています。」などといった表示を行う必要があります。

 次回は、最終回ですが、ステマ規制について今回まで説明しました事柄のまとめを行いたいと思います。

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弁護士浅井佑太

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