加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「取締役を解任する方法とその手続」

【目次】

1 株主総会による解任

2 取締役会設置会社における解任手続

3 取締役会非設置会社における解任手続

4 解任の登記

1 株主総会による解任

取締役は、株主総会決議によっていつでも解任することができ(会社法339条1項)、定時株主総会、臨時株主総会のいずれでも行うことができます。また、裁判所の許可を得た少数株主により招集された株主総会(会社法297条4項)においても解任が可能です。

この権限は、株主の絶対的権利に基づくものであり、解任理由の如何にかかわらず、株主の判断で行うことができます。会社と取締役の間で一定期間は解任しない旨の不解任特約がある場合も、株主総会議決による解任を妨げないと解されています。

なお、取締役の解任は、選任と同様に普通決議で足り、議決権の過半数を有する株主が出席し、その過半数の賛成で可決されます(会社法341条)。定款により、定足数を3分の1以上まで引き下げたり、決議要件を引き上げることも可能です(会社法341条かっこ書)。

ただし、累積投票(会社法342条)により選任された取締役や監査等委員である取締役を解任する場合は、特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、その3分の2以上の賛成)が必要です(会社法342条6項、309条2項7号)。

取締役解任の効力は決議により直ちに生じ、当人に対する告知を要しないと解されています。解任された取締役は権利義務取締役とはならず(会社法346条1項かっこ書)、正当な理由なく解任された場合には、会社に対して損害賠償請求をすることができます(会社法339条2項)。

2 取締役会設置会社における解任手続

取締役会設置会社においては、株主総会の目的事項(議題)は取締役会決議により定めなければならず(会社法298条1項2号、4項)、株主総会においては、会議の目的事項以外の事項を決議することができません(会社法309条5項)。そのため、取締役の解任を株主総会の議題とするには、取締役会においてその旨決議する必要があります。 

取締役解任の議題は、特定の取締役を対象とするものであり、議題は招集通知に記載または記録されます(会社法299条2項、3項、4項)。なお、書面投票または電子投票を採用する会社では、招集通知の際に、参考書類に取締役の解任に関する事項を記載等し、交付または提供する必要があります(会社法301条1項、2項、会社法施行規則73条1項1号、2号、2項、78条)。

株主が取締役の解任議案を提出する場合は、株主総会の会日の8週間前(定款で短縮可)までに株主提案権を行使する必要があります(会社法303条1項、2項、305条1項、2項)。

また、株主が株主総会まで待つことができないと判断する場合には、株主総会招集請求権を行使することができます。請求後遅滞なく招集手続きが行われない場合、または8週間(定款で短縮可)以内の日を会日とする株主総会の招集通知を発しない場合には、株主自身が裁判所の許可を得て株主総会を招集し、解任議案を提出することも可能です(会社法297条1項、2項、4項)。

3 取締役会非設置会社における解任手続

取締役会非設置会社においては、取締役会設置会社とは異なり、株主総会で招集者が定めた会議の目的事項以外の事項についても決議することができます。また、招集通知を必ず書面で行う必要もありません。

そのため、取締役の解任を求める株主は、株主総会の議場において、動議を提出し、解任議案を上程することも可能です(会社法304条)。

また、裁判所の許可を得た少数株主により招集された株主総会において解任議案を提出できる点は、取締役会設置会社と同様です。

4 解任の登記

取締役を解任した場合は、2週間以内に変更登記をする必要があります(会社法915条1項、911条3項13号)。また、登記申請の際には、解任決議をした株主総会議事録の添付が必要です(商業登記法54条4項、46条2項)。

なお、解任された取締役について、「辞任による退任」として登記された場合でも、その登記は有効とされています。


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