加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「同一労働・同一賃金」⑤-有給の病気休暇

前回までのおさらい:

 「不合理な待遇差」か否かの基本的な判断枠組みである「2つのステップ」と「4つの要素」については、以前の記事をご覧ください。

  

 今回は、「有給の病気休暇」を巡る契約社員と正社員の待遇差について、大阪医科大学事件最高裁判決と日本郵便事件最高裁判決の2つの判決を踏まえてご説明いたします。

  

 結論としては、大阪医科大学事件最高裁判決日本郵便事件最高裁判決は、異なる判断を示しました。

  

 なぜ、異なる結論に至ったのか。

 その理由は、事案の相違にあります。

  

 前回までの記事において、「最高裁判決の結論が重要なのではなく、その結論にいたる理由の部分こそが重要なのです!」としつこく繰り返してきましたが、そのことが2つの判決の理由部分を見るとよくご理解いただけるかと思います。

  

 もちろん、いずれの判決も、改正法と同様、「2つのステップ」と「4つの要素」にもとづいて判断を行っています。

  

 まずは、有給の病気休暇(私傷病による欠勤中の賃金)について、契約社員に付与しなくても「不合理ではない」と結論付けた大阪医科大事件最高裁判決について、ごくごく簡単にかみ砕いて表に整理しました。

  

 続いて、有給の病気休暇について、契約社員に付与しないことは「不合理である」という全く逆の結論を下した日本郵便事件最高裁判決について、ごくごく簡単にかみ砕いて表に整理したのが、以下の表です。

  

 この2つの表を見れば、2つのポイントが見えてきます。

  

 1つ目のポイントは、いずれの最高裁判決も、「ステップ1」である「待遇の性質・目的」でほとんど結論が出てしまっているということです。

 他方、「ステップ2」である「4つの要素」については、明らかに重きを置いていません。

 これは、有給の病気休暇という待遇の趣旨からすれば、付与すべきか否かは「長く働いてもらうことが期待されているか否か」が重要なのであって、その他の要素はそれに比べれば重要ではない、ということを意味してます。

  

 2つ目のポイントは、大阪医科大事件最高裁判決と、日本郵便事件最高裁判決で結論が分かれた理由が、被告となった各法人において、原告たる契約社員が、「長く働くことが期待・予定」されている存在であったのか否か、という点で事情が異なったということになります。

 より具体的に検討してみましょう。

 大阪医科大事件では、契約社員は長期雇用を前提とした勤務ではないと判断されましたが、この事案においては契約期間の上限が5年とされていたという事情があります。

 他方で、日本郵便事件においては、原告らは10年程度にわたって更新され続けてきたという事情があります。

  

 この二つの最高裁判決の事案から、「5年未満では継続的な勤務が見込まれているとはいえず、10年近くになっていれば継続的な勤務が見込まれているといえる」、という風に一般化することはできませんが(一定の基準が見いだされるためには、更なる裁判例の集積を待つほか有りません。)、皆様の会社において待遇差の合理性を判断するにあたっては、これらの判決の事案の相違点はとても参考になるのではないでしょうか。

  

 本稿は、以上です。

 次回は、待遇差について、具体的にどのような措置を講じる必要があるのか、についてご説明いたします。

  

以上

(弁護士 坂本龍亮)

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