1.AI導入は広がりを見せる(出典:総務省『令和7年版 情報通信白書』)
総務省の『令和7年版 情報通信白書』によれば、2024年度に実施された企業のAI利用実態に関する調査において、AIを「すでに活用している」と回答した企業は31.8%、「今後活用を予定している」企業は42.1%に達しています。
全体の7割以上がAI導入を視野に入れており、AIは今や一部の先進企業だけの試みではなく、生産性向上を支える基盤技術として浸透しつつあります。
AI活用の目的としては、「業務効率化」「人材不足への対応」「データ活用による意思決定の高度化」が上位を占めています。
総務省は、AIが「社会基盤」として定着する中で、製造・物流・医療など多様な分野で業務の最適化を支える役割を果たしていると指摘しています。
一方で、企業規模による格差も明らかになっています。大企業では方針を定めて活用を進めている割合が高いのに対し、中小企業では「方針を明確に定めていない」企業が47.6%にのぼり、導入の遅れが顕著です。
このように、AI導入の波は広がっているものの、活用体制の成熟度には二極化が生じているのが現状です。
2.生成AIの導入も着実に進展(出典:帝国データバンク「生成AI活用は17.3%にとどまる」)
AI技術の中でも特に急速に成長している生成AIに関して、利用実態等について帝国データバンクが実施した調査によると、「生成AIを活用している」と回答した企業は17.3%にとどまりましたが、「検討中」が26.8%と、導入への関心の高さがうかがえます。
企業の約4割が生成AI活用を視野に入れており、AI利用の次なる段階として生成AIが注目されています。
業種別にみると、「サービス業(28.0%)」や「小売業(20.4%)」では導入が進む一方、「運輸・通信(10.4%)」「建設・不動産(9.4%)」では依然として低水準です。
これは、業務の性質やデジタル化の進展度合いによる導入効果の差が背景にあります。生成AIを導入した企業の86.7%が効果を実感しており、「情報収集(59.9%)」「文章の要約・校正(53.9%)」「アイデア出し(53.8%)」といった知的業務の効率化で成果を上げています。
つまり、いわゆるホワイトカラー業務の領域においてAIの恩恵が顕著に表れ始めているといえます。
3.導入に慎重な企業が抱える課題
一方で、AI導入に対して慎重な姿勢をとる企業も依然として少なくありません。前掲の帝国データバンクによれば、導入をためらう主な理由は「AI運用の人材・ノウハウ不足」(54.1%)、「情報の正確性への不安」(41.1%)、「活用すべき業務が不明確」(39.1%)が上位を占めています。
企業からは「どのように活用できるか分からない」「AIの出力内容の真偽を確認する手間がある」といった声が寄せられ、導入に対する理解や技術面での不安が障壁となっている実態がうかがえます。
さらに、経営層と現場担当者の間には温度差もあります。経営層の67.7%が「AI活用に理解がある」と回答したのに対し、一般社員では30.4%にとどまりました。この「AIへの心理的距離」も、組織的導入を阻む一因です。
総務省の白書でも同様に、生成AI導入時の懸念として「活用方法がわからない」「セキュリティリスク」「初期・運用コスト負担」が上位に挙げられています。
このことから、導入の遅れは単に技術的課題だけでなく、組織的ガバナンスや人材育成の不足にも起因していることが分かります。
実際の相談においても、企業様からは、AIの利用に向けた社内制度等の整備に関するご相談や、十分なリスク管理・検討がなされないまま導入が進む現状への危機感を感じている状況がうかがえます。
そこで、次の記事では、企業がAIツールを導入するにあたり必要不可欠な、対外及び対内の2種類のAIポリシー・ガイドラインについて紹介していきます。
加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に企業法務、企業の内部統制構築(AIガバナンス)、AIポリシー・AIガイドライン等のAIツール導入・利用に関する社内規程整備のご相談・ご依頼をお受けしております。



