加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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M&Aにおける合併②ー吸収合併の手続①

M&Aにおける合併②ー吸収合併の手続①

第1 吸収合併の手続の流れ

 吸収合併の手続は以下の流れで行われます。

 本稿では、上記の吸収合併手続のうち、吸収合併契約及び消滅会社、存続会社それぞれの株主総会における合併の承認決議についてご説明いたします。

第2 吸収合併契約

1 法定記載事項

 吸収合併契約書に記載される事項は多岐にわたり、合併契約書とは別に、合併覚書、合併基本合意書、合併付随契約書といった契約書が作成されることもあります。

 もっとも、会社法上、吸収合併契約(748条)において定めることが求められている事項は次のとおりです(749条1項)。

① 存続会社及び消滅会社の商号および住所

② 存続会社が消滅会社の株主に対して交付する金銭等について次に掲げる事項

イ 存続会社株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては株式の種類および種類ごとの数)またはその数の算定方法並びに存続会社の資本金および準備金の額に関する事項

※ 会社計算規則35条、36条の規定に従う旨記載することで足ります。

ロ 存続会社の社債であるときは、当該社債の種類および種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

ハ 存続会社の新株予約権であるときは、当該新株予約権の内容および数またはその算定方法

ニ 存続会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項および当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項

ホ 株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容および数若しくは額又はこれらの算定方法

③ 消滅会社の株主に対する金銭等の割当てに関する事項

※ 割当比率については、株主平等原則のもと、消滅会社の株主が有する株式の数に応じて決まります(749条3項)が、種類株式発行会社の場合には、株式の種類に応じて株主間の割当比率に差が 生じることがありえます(749条2項)。

※ 消滅会社が有する自己株式および存続会社が有する消滅会社株式(抱き合わせ株式)に対しては割当てできません(749条1項3号括弧書き)。

※ 実務上、割当比率の調整のために、株式に加えて、合併交付金が支払われることがあります。

④ 存続会社が消滅会社の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる存続会社の新株予約権または金銭についての次に掲げる事項

イ 消滅会社の新株予約権者に交付される存続会社の新株予約権の内容および数またはその算定方法

ロ 消滅会社の新株予約権者に交付される存続会社の新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、存続会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその 承継に係る社債の種類および種類毎の各社債の金額の合計額又はその算定方法

ハ 消滅会社の新株予約権者に金銭が交付されるときは、金銭の額又はその算定方法

⑤ ④の場合、消滅会社の新株予約権者に対する存続会社の新株予約権または金銭の割当てに関する事項

⑥ 効力発生日

第3 消滅会社における合併契約の株主総会による承認

1 株主総会特別決議

 消滅会社は、合併契約について、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議によう承認を受ける必要があります(783条1項、309条2項12号)。

 ただし、総株主の同意を得て株主総会招集手続を省略すること(300条)、議決権がある株主全員の書面等による同意による株主総会決議の省略(319条1項)も可能です。

 株主総会招集通知と株式買取請求の通知を併せて一つの通知で行うこともできます。

 また、書面(電磁的方法)により議決権行使が行われる場合には、株主総会参考書類に、吸収合併を行う理由、吸収合併契約の内容の概要など備置書面等記載事項の内容の記載も要求されます(規則86条)。

2 種類株主総会

 合併会社の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときはその種類株主による種類株主総会の特別決議が必要となります(322条1項7号、324条2項4号)。もっとも、定款による排除も可能で、実務上排除している例が多く見受けられます。

3 特殊決議等

 消滅会社が種類株式発行会社である場合において、消滅会社の譲渡制限株式でない株式の株主に対し、存続会社の存続会社の譲渡制限株式、取得条項付株式、あるいは、取得条項付新株予約権が交付される場合には、株主総会・種類株主総会の特殊決議(議決権のある株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります(309条3項2号、783条3項、規則186条)。

 また、持分会社の持分等が交付される場合には、交付を受ける株主全員の同意が必要です(783条2項、4項、規則185条)。

4 略式合併

 存続会社が、消滅会社の特別支配会社である場合には、消滅会社の株主総会決議は不要です(784条1項)。特別支配会社とは、子会社の総議決権の10分の9以上を所有している会社をいい、その所有には100%子会社等による間接保有も含まれます(468条1項、規則136条)。

 ただし、消滅会社が公開会社であって、かつ消滅会社の株主に対し存続会社の譲渡制限株式等が交付される場合は、消滅会社の株主総会の特別決議が必要です(784条1項但書)。

第4 存続会社における合併契約の株主総会による承認

1 株主総会特別決議

 存続会社は、合併契約について、効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議による承認を受ける必要があります(795条1項、309条2項12号)。株主総会開催にあたっての手続は前記第3の1と同様です。また、総株主の同意を得て株主総会招集手続を省略すること(300条)、議決権がある株主全員の書面等による同意による株主総会決議の省略(319条1項)も可能です。

 消滅会社から承継する資産の中に、存続会社の株式があるとき、すなわち自己株式の取得となる場合には、取締役は、株主総会においてその旨を説明しなければなりません(795条3項)。

 また、存続会社に合併差損が生ずる吸収合併の場合にも、取締役は、株主総会においてその旨を説明しなければなりません(795条2項)。合併差損が生ずる場合とは①存続会社が消滅会社から承継する承継債務額が承継資産額を超えるとき(795条2項1号)、②存続会社が消滅会社の株主に対し交付する存続会社の株式等を除く合併対価の帳簿価額が承継資産額から承継債務額を控除して得た額を超えるとき(795条2項2号)をいいます。

 なお、承継債務額、承継資産額については、規則195条に定めがあります。

承継債務額の計算方法

 【合併直後に存続会社の貸借対照表の作成があったものとする場合における当該貸借対照表の負債の部に計上すべき額】-【消滅会社の株主に対して交付する金銭等の帳簿価額】-【合併直前に存続会社の貸借対照表の作成があったものとする場合における当該貸借対照表の負債の部に計上すべき額】

承継資産額の計算方法

【合併直後に存続会社の貸借対照表の作成があったものとする場合における当該貸借対照表の資産の部に計上すべき額】-【合併直前に存続会社の貸借対照表の作成があったものとする場合における当該貸借対照表の資産の部に計上すべき額】-【消滅会社の株主に対して交付する金銭等の帳簿価額】

※存続会社が連結配当規制適用会社である場合において、消滅会社が存続会社の子会社であるときは、上記計算方法により求められる承継債務額及び承継資産額のうちいずれか高い額をもって、承継資産額とする。

2 種類株主総会

 存続会社が種類株式発行会社である場合に、存続会社が交付する合併の対価が譲渡制限株式であるときは、その種類の株主の種類株主総会の特別決議も要します(795条4項1号、324条2項6号)。

 また、合併会社の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときはその種類株主による種類株主総会の特別決議が必要となります(322条1項7号、324条2項4号)

3 略式合併

 消滅会社が、存続会社の特別支配会社である場合には、存続会社の株主総会決議は不要です(796条1項)。

 ただし、存続会社が公開会社でなく、かつ消滅会社の株主に存続会社の譲渡制限株式が交付される場合は、存続会社の株主総会の特別決議が必要です(796条1項但書)。

4 簡易合併

 ⑴ 簡易合併となる要件

  ア 5分の1ルール 

 消滅会社の株主に交付する存続会社の株式の数に一株当たり純資産額を乗じた金額、消滅会社の株主に交付する社債、新株予約権または新株予約権付社債の帳簿価格の合計額及び消滅会社の株主に交付する株式等以外の財産の帳簿価額の合計額が、存続会社の純資産の額の5分の1を超えない場合(いわゆる5分の1ルール)には株主総会決議は不要です(簡易合併・796条2項)。

 消滅会社の「一株あたり純資産額」の算定については、規則25条に定めがあります。これによれば、消滅会社の1株当たり純資産額は、「基準純資産額÷基準株式数×株式係数」と定められています。

  イ 基準株式数

 このうち、「基準株式数」とは、種類株式を含めた発行済株式(自己株式を除く。)の総数を意味します(規則25条4項)。また、「株式係数」は、原則的には「1」となりますが、消滅会社が種類株式発行である場合において、定款である種類の株式について、当該種類の株式一株を「1」とは異なる数の株式として取り扱うために、「1」以外の株式係数を定めた場合にあっては、当該係数が適用されます(規則25条5項)。

  ウ 基準純資産額

 そして、「基準純資産額」の算定については、規則25条は、算定基準日(吸収合併契約に特段の定めがない限り吸収合併契約の締結日)における以下の①から⑥の合計額から⑦の額を減じて得た額(当該額が0円を下回る場合にあっては0円)と定めています。

① 資本金の額

② 資本準備金の額

③ 利益準備金の額

④ 法446条に規定する剰余金の額

⑤ 最終事業年度の末日(最終事業年度がない場合にあっては、株式会社成立の日)における評価・換算差額等に係る額

⑥ 新株予約権の帳簿価額

⑦ 自己株式及び自己新株予約権の帳簿価額の合計額

  エ 純資産額の算定

 また、存続会社の「純資産の額」の算定については、規則196条は、算定基準日(吸収合併契約に特段の定めがない限り吸収合併契約の締結日)における①から⑥の合計額から⑦の額を減じて得た額(当該額が500万円を下回る場合にあっては、500万円)と定めています。

① 資本金の額

② 資本準備金の額

③ 利益準備金の額

④ 法446条に規定する剰余金の額

⑤ 最終事業年度の末日(最終事業年度がない場合にあっては、株式会社成立の日)における評価・換算差額等に係る額

⑥ 新株予約権の帳簿価額

⑦ 自己株式及び自己新株予約権の帳簿価額の合計額

 ⑵ 簡易合併であっても例外的に株主総会の特別決議が必要となる場合

  ア 株主の反対の意思表示

 ただし、簡易合併であっても、法務省令で定める数(規則197条)の株主が、株主に対する通知・公告(797条3項、4項)の日から2週間以内に合併に反対の意思表示をしたときは、効力発生日の前日までに、例外的に株主総会特別決議による承認を受ける必要があります(796条3項)。

   規則197条で定める数は①から④の数のうち、いずれか小さい数です。

① 以下の計算方法により得られる数

特定株式(合併契約の承認に係る株主総会において議決権を行使することができる株式のこと。)の総数

 × 1/2(当該株主総会の決議が成立する要件として当該特定株式の議決権数の一定割合以上の議決権を有する株主が出席しなければならない旨の定款の定めがある場合にあっては、当該一定の割合)

 × 1/3(当該株主総会の決議が成立する要件として当該株主総会に出席した当該特定株主の有する議決権数の一定割合以上の多数が賛成しなければならない旨の定款の定めがある場合にあっては、1から当該一定の割合を減じて得た割合)+1

② 合併契約の承認に係る株主総会決議が成立するための要件として、一定の数以上の特定株主の賛成を要する旨の定款の定めがある場合において、定款で定めた当該一定の数>(特定株主の総数- 反対通知を行った特定株主の数)となるときにおける、合併に反対する旨の通知をした特定株主の有する特定株式の数

③ 合併契約の承認に係る株主総会決議が成立するための要件として、上記①②以外の定款の定めがある場合に、合併に反対する旨の通知をした特定株主の全部が株主総会において反対したとすれば決議が成立しないときは、反対する旨の通知をした特定株主の有する特定株式の数

④ 定款で定めた数

イ 合併差損が生じる場合

 存続会社に合併差損が生じる場合(795条2項1号、2号)及び存続会社が公開会社でなくかつ存続会社の譲渡制限株式を交付する場合は、存続会社の株主総会の特別決議が必要となります(796条2項但書)。

5 定款変更等

  合併の際に、存続会社において、商号・目的等の定款変更や役員選任がされる例が多くあります。会社法上は、合併手続とは異なるため、別途定款変更手続きが必要となります。

M&Aにおける合併①-合併の意義、特徴

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