加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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M&Aにおける合併③ ― 吸収合併の手続②

M&Aにおける合併③ー吸収合併の手続➁

第1 はじめに

 本稿では、M&Aにおける合併② ― 吸収合併の手続①で紹介いたしました吸収分割の手続のうち、事前備置書面、事後備置書面について説明します。

  

第2 事前備置書面等

1 備置開始日

 存続会社は、備置開始日から、効力発生日の後6ヶ月を経過する日まで、吸収合併契約書その他法務省令で定める事項を記載した書面または電磁的記録を本店に備置しなければなりません(794条1項)。

 消滅会社は、備置開始日から、効力発生日まで、同様に備置する必要があります(782条1項1号)。

 備置開始日は、次に掲げる日のいずれか早い日をいいます(782条2項、794条2項)。

  ① 合併承認総会の2週間前の日

  ② 反対株主の株式買取請求に関する通知・公告の日

  ③ 新株予約権買取請求に関する通知・公告の日

  ④ 債権者の異議に関する公告・催告の日

  

2 法定記載事項

  備置書面に記載すべき事項は以下のとおりです。

 ⑴ 存続会社(794条1項、規則191条)

  ① 合併契約の内容

  ② 合併対価に関する以下の事項

ⅰ 存続会社の株式に代わって交付する金銭等に関する事項及び金銭等の割り当てに関する事項についての定め(749条1項2号、3号)の相当性

ⅱ 存続会社の株式に代わって交付する金銭等に関する事項及び金銭等の割り当てに関する事項についての定めがない場合には、当該定めがないことの相当性

  ③ 消滅会社の新株予約権に関する以下の事項

ⅰ 消滅会社の新株予約権者に対して交付する存続会社の新株予約権又は金銭に関する事項についての定め(749条1項4号、5号)の相当性

ⅱ 消滅会社の新株予約権者に対して交付する存続会社の新株予約権又は金銭に関する事項について定めがない場合には、当該定めがないことの相当性

  ④ 消滅会社の財務状況に関する以下の事項

ⅰ 最終事業年度にかかる計算書類等の内容

ⅱ 最終事業年度がない場合は、消滅会社の成立日における貸借対照表

ⅲ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)の日を臨時決算日とする臨時計算書類があるときは、当該臨時計算書類等の内容

ⅳ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)に会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、当該事象の内容に関する事項

  ⑤ 存続会社の財務状況に関する以下の事項

ⅰ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)に会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、当該事象の内容に関する事項

ⅱ 最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日における貸借対照表

⑥ 存続会社の債務の履行の見込みに関する事項(799条1項により吸収合併について異議を述べることのできる債権者に対して負担する債務に限る)

⑦ 備置開始後、合併の効力発生日までに備置書面の記載事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

  

 ⑵ 消滅会社(782条1項、規則182条1項)

  ① 合併契約の内容

  ② 合併対価に関する以下の事項

ⅰ 合併対価の相当性に関する事項

ⅱ 規則182条4項各号に掲げる、合併対価について参考となるべき事項

③ 規則182条5項各号に掲げる、吸収合併に係る新株予約権の定めの相当性に関する事項

④ 存続会社の財務状況に関する以下の事項

ⅰ 最終事業年度にかかる計算書類等の内容

ⅱ 最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日における貸借対照表

ⅲ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)の日を臨時決算日とする臨時計算書類があるときは、当該臨時計算書類等の内容

ⅳ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)に会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、当該事象の内容に関する事項

⑤ 消滅会社の財務状況に関する事項

ⅰ 最終事業年度がない場合は、消滅会社の成立日における貸借対照表

ⅱ 最終事業年度の末日後(最終事業年度がない場合は、存続会社の成立日後)に会社財産の状況に重要な影響を与える事象が生じたときは、当該事象の内容に関する事項

⑥ 合併の効力発生日以後における、存続会社の債務の履行の見込みに関する事項

⑦ 備置開始後に記載事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項

  

3 事前備置書面の閲覧、謄本の交付  

 存続会社・消滅会社の株主または会社債権者は、営業時間内はいつでも、備置書面について閲覧を請求し、または、会社の定めた費用を支払って謄本等の交付を請求することができます(782条3項、794条3項)。

  

第3 事後備置書面

1 備置期間

 存続会社は、効力発生日後遅滞なく、存続会社が承継した消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令(規則200条)で定める事項を記載等した書面または電磁的記録を本店に効力発生日から6か月間備え置かなければなりません(801条1項)。

  

2 事後備置書面の記載事項

 規則200条各号で定める事項は以下のとおりです。

① 効力発生日

② 消滅会社及び存続会社における以下の手続の経過

   ⅰ 吸収合併差止請求手続

   ⅱ 反対株主の株式買取請求手続

   ⅲ 新株予約権買取請求手続

   ⅳ 債権者保護手続

③ 存続会社が承継した重要な権利義務に関する事項

④ 消滅会社において事前開示事項として備え置いた書面又は電磁的記録に記載又は記録がされた事項

⑤ 合併に関する変更の登記をした日

⑥ その他合併に関する重要な事項

  

3 事後備置書面の閲覧、謄本の交付請求

 株主、債権者は、営業時間内はいつでも、備置書面等について閲覧を請求し、または会社の定めた費用を支払って謄本等の交付を請求することができます(801条4項)。

M&Aにおける合併① ― 合併の意義・特徴

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