加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株主名簿7-株主名簿を巡る対応③

2 株主名簿の名義書換請求に対する対応

(2)対応を誤った場合の法的リスク 

名義書換請求を不当に拒絶したり、過失により対応を怠った場合、当該請求者を株主として取り扱わなければならないと解されています(最判昭和41年7月28日民集20巻6号1251頁)。

その結果、株主総会において、真の権利者ではない者(名義人)が議決権を行使、あるいは真の権利者(名義書換を不当に拒絶されている名義書換請求者)が議決権を行使できずに決議がなされるという事態が生じ、当該総会決議が瑕疵を帯びることになります(株主総会決議の効力が争われるリスクが生じます)。

また、名義書換を遅滞させたことによって請求者等に損害が発生した場合、会社や取締役は損害賠償責任を負うリスクがあります(会社法350条、429条、民法709条、715条)。更に、取締役等は過料に処されるリスクもあります(会社法976条7号)。

なお、真の権利者ではない者からの株主名簿名義書換請求に会社が安易に応じた場合にも同様のリスクが発生します。

但し、株券発行会社においては、株券の占有者は、当該株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定されるため(会社法131条1項)、有効な株券提示を受けて名義書換請求に応じた会社は、当該請求者が無権利者であることにつき悪意・重過失がない限り、原則として免責されます。

(3)予防策・対応方針 

上記のような法的リスクを回避するために、名義書換手続の準則を定めておくことが肝要です。

・株券不発行会社の場合、定款等において、株式名簿名義書換手続の詳細を定める(請求書の様式の指定、株主と譲受人双方が署名及び実印による捺印、印鑑登録証明書の添付等)ことにより、株式譲渡の事実確認を徹底します。

・株券発行会社の場合、株券占有者が適法な権利者と推定されますので(会社法131条1項)、株券を提示して名義書換請求をなされた場合(会社法133条2項、会社施行規則22条2項1号)には、会社側で当該請求者が無権利者であることを立証できるだけの証拠を保有していない限り、原則として当該名義書換請求に速やかに応じるべきです。

<続く>

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」株主名簿8-株主名簿を巡る対応④

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