加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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辞任した取締役の保有株式を取得する方法①

1 退任取締役保有株式を取得する必要性

2 株式取得の具体的方策

3 事前の対策を講じている場合

 4 事前の対策を講じていない場合

1 退任取締役保有株式を取得する必要性

 会社設立時に、共同経営者の一人である取締役が会社へ出資して株式を保有する場合や、取締役在任中にインセンティブ目的で会社株式を付与される場合は、実務上少なくない。

 在任中であれば、当該取締役の議決権行使の方針は、現経営陣や支配株主の意向と概ね一致することが多く、当該取締役が株式を保有していること自体が直ちに会社経営上の支障となる場面は少ない。しかし、退任後では、その議決権行使の方針が現経営陣や支配株主の意向と一致する保証はなくなる。

 例えば、退任取締役が3分の1を超える株式を保有している場合には、当該取締役の意思次第で、株主総会特別決議(会社法309条2項)等の会社経営上重要性の高い決議を可決できないなど、会社経営に重大な支障を来すおそれがある。

 また、仮に退任取締役の保有株式数が少数であったとしても、株主には、株主総会における質問権(会社法314条)、株主提案権(会社法303条、304条、305条)、各種閲覧謄写請求権など、広範な株主権が認められている。そのため、取締役退任後も株主としての地位を維持させた場合、これらの株主権の行使を通じて、会社の円滑な経営に支障が生じる可能性は否定できない。

 以上のことから、取締役の退任にあたっては、当該取締役の保有株式を取得する必要性がある。

2 株式取得の具体的方策

 退任取締役の保有株式を取得する方法としては、大別すると、事前の対策を講じている場合と、事前の対策を講じていない場合に分けることができる。取締役が退任したからといって、当然に当該取締役の保有株式を取得できるわけではない。

3 事前の対策を講じている場合

(1)株主間契約及び同内容の契約締結により、退任時の株式売渡しを約させる方法

 取締役に株式を付与する際にあらかじめ株主間契約を締結しておく、又は会社と取締役との間で同趣旨の契約を締結しておく方法がある。

 この場合には、退任を条件として、会社、支配株主、又はこれらが指定する第三者に対して株式を売り渡すことを強制する条項を設けるとともに、買取価格又はその算定方法をあらかじめ定めておくのが一般的である。

(2)取得条項付種類株式(会社法108条1項6号)を利用する方法

 取締役に付与する株式を、取締役の退任を取得事由とする取得条項付種類株式とする方法も考えられる。

 この場合には、当該取締役に株式取得させる前に取得条項付種類株式の内容(会社法108条2項6号、107条2項3号)を定める定款変更手続(会社法466条、309条2項111号)を行い、その後、当該種類株式の発行手続、あるいは既存の株式を当該種類株式に変更するための手続を行う必要がある。

(3)役員持株会を通じて間接的に株式を保有させる方法

 会社主導で会社役員が株式の保有を目的として運営する組織である役員持株会を設立し、取締役には同会を通じて間接的に株式を保有させる方法もある。

 この場合には、会社主導で役員持株会を設立するにあたって、役員の地位を失うことを持株会の退会事由にするとともに、退会時には、当該役員の持分(保有株式)を、他の役員、会社又は第三者が強制的に買い取ることを内容とする持株会規則を定め、併せて持株会と会社との間で必要な合意をしておくことが一般的である。

〈続く〉

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