加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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契約文書の電子化③ ― 電子化が可能な文書

 契約文書の電子化③ ― 電子化が可能な文書

1 はじめに

 本稿では、契約文書の電子化の導入に関連して、現時点(令和2年5月28日現在)で、書面化が必須とされている文書及び電子化するために相手方の希望や同意が必要とされている文書の一部について紹介いたします。

2 書面化必須の契約 

 ⑴ 定期借地契約・定期建物賃貸借契約

 土地建物の賃貸借において定期借地、定期借家の特約を設定するためには、公正証書等の文書によって行うことが要求されています(借地借家法22条、38条1項)。

 

 ⑵ 取壊し予定の建物の賃貸借

 取壊し予定の建物の賃貸借については、建物を取り壊すべき事由を記載した書面によってしなければならないとされています(借地借家法39条2項)。

 

 ⑶ 宅地建物売買等媒介契約

 現状、宅地建物取引業法上、宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結にあたって重要事項説明書等を書面で作成して記名押印したうえで、依頼者にこれを交付しなければならないとされています(34条の2、35条1項、37条1項、3項)。ただし国土交通省は、「重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係る社会実験(令和元年度~)」を行うなど、電子化を進める動きを見せています。

 

 ⑷ マンション管理業務委託契約

 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結したときは、当該管理組合の管理者等(当該マンション管理業者が当該管理組合の管理者等である場合又は当該管理組合に管理者等が置かれていない場合にあっては、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員)に対し、遅滞なく、契約内容を記載した書面を交付しなければならないとされています(マンション管理の適正化の推進に関する法律73条1項)。当該書面には管理業務主任者の記名押印が求められています(同条2項)。

 

 ⑸ 特定商取引

 特定商取引に関する法律上、販売業者及び役務提供事業者には、顧客に対して書面を交付する義務が課されています(訪問販売・4条、電話勧誘販売・18条、19条、連鎖販売取引・37条、特定継続役務提供・42条、業務提供誘引販売取引・55条、訪問購入・58条の7、58条の8)。

 

 ⑹ 労働者派遣個別契約

 派遣法は、労働者派遣契約の当事者に対し、労働者派遣契約の締結に際し、契約内容を書面で定めることを求めています(派遣法26条1項、同法施行規則21条3項)。もっとも、後述のとおり、派遣法改正(令和元年4月1日施行)によって、派遣労働者が希望する場合には、派遣労働者に対する就業条件の明示書面の電子化が認められたことから、今後、派遣個別契約についても電子化が進むことが考えられます。

3  相手方の希望ないし承諾がある場合に電子化が可能な文書

 ⑴ 労働条件通知書面

 使用者は、労働契約の締結に対し、労働者に対し労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。明示の方法は原則として書面とされていますが、労働者の希望がある場合にはメール等の方法で明示することが認められています(同施行規則5条4項)。

 

 ⑵ 派遣労働者への就業条件明示書面

 派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、就業条件を明示しなければなりません(派遣法34条)。明示の方法は原則として書面とされていますが、派遣法改正(令和元年4月1日施行)によって、労働者の希望がある場合にはメール等の方法で明示することが認められるに至っています(同施行規則26条1項2号)。

 

 ⑶ 建設業法上の重要事項説明書面 

 建設業法上、請負契約の当事者に対して、記名押印した重要事項説明書面の交付義務が課されています(建設業法19条1項)。もっとも、かかる書面は相手方の承諾を得て電子化することが可能です(同条3項、同法施行令5条の5第1項 同規則13条の2)。

 なお、「建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドライン」においては、電子化の方法として公開暗号方式、電子的な証明書の添付と同等の効力を有すると認められる措置を講じることが求められています。

 ⑷ 不動産特定共同事業契約締結前の書面及び契約締結後の重要事項説明書面

 不動産特定共同事業契約とは、複数の投資家の出資を受けて不動産特定共同事業者(不動産会社など)が現物の不動産に関する事業を行い、その運用収益を投資家に分配する契約をいいます(不動産特定共同事業法2条3項)。

 不動産特定共同事業者は、契約締結前に、申込者に対して書面を交付して説明を行うことが義務づけられています(同法24条1項)。ただし、申込者の承諾を得られた場合には、電子メール等で交付することが認められています(同条3項)。また、国交省のガイドライン(「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」19頁、第7―7)によると、「投資家が画面上に表示される説明事項を読み、その内容を理解した上で画面上のボタンをクリックする等の方法で投資家が理解した旨を確認する」ことによって口頭の説明も不要とされています。

 また、不動産特定共同事業者には、不動産特定共同事業契約締結後、契約当事者に対し、重要事項の説明書面を交付することが義務づけられています(同法25条1項)が、かかる書面についても相手方当事者の承諾がある場合には、電子メール等で交付することが可能です(同条3項が24条3項を準用)。

 ⑸ 下請に対する受発注書面 

 親事業者は、下請事業者に対し、下請法3条1項に定める書面を交付することが義務づけられています。もっとも、下請事業者の承諾がある場合には、これをメール等によって提供することが可能です(下請法3条2項、同法3条の書面の記載事項等に関する規則2条、下請取引適正化推進講習会テキスト113頁)。

 ⑹ 投資信託契約約款

 金融商品取引業者は、原則として、その締結する投資信託契約に係る受益証券を取得しようとする者に対して、当該投資信託契約に係る投資信託約款の内容等を記載した書面を交付しなければなりません(投資信託及び投資法人に関する法律5条1項)。もっとも、当該受益証券を取得しようとする者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子メールやホームページに記載する方法等によって提供することが認められています(同条2項、同法施行規則11条)。この場合において、当該金融商品取引業者は、当該書面を交付したものとみなされます。

契約文書の電子化① ― 契約文書の電子化の意義・方法

契約文書の電子化② ― 法律上、電子署名が手書きの署名・押印と同様の機能を果たすか

                              弁護士 林 征成

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