加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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M&Aにおける合併➀ ― 合併の意義・特徴

M&Aにおける合併➀ ― 合併の意義・特徴

第1 合併の意義

 先日のコラムM&Aにおける会社分割➀では、M&Aにおける会社分割について説明いたしました。本稿では、合併について説明いたします。

合併とは、合併契約の当時会社のうち一部の会社又は全部の会社が解散し、解散した会社の権利義務が清算手続を経ることなく存続会社または新設会社に包括承継され、消滅会社の株主には存続会社・新設会社の株式その他の財産が交付される手続をいいます。同じ組織再編行為である会社分割では分割会社の権利義務の一部が承継されるのに対し、合併では、消滅会社の権利義務が、労働契約等の継続的法律関係も含め、存続会社・新設会社に一般承継されるという違いがあります。もっとも、合併においても対抗要件は具備する必要があります。

第2 吸収合併・新設合併

合併には、既存の会社の権利義務を承継する吸収合併と、複数の会社が会社を新設してそこに権利義務を承継させる新設合併があります。ただ、実務上は、新設合併の事例は稀といわれています。理由としては、新設合併は吸収合併に比べて登録免許税が高額となること、新設合併では当時会社の許認可が一旦消滅してしまうことが挙げられます。

第3 会社の種類

株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の種類を問わず他の会社と合併することができます(748条)。ただし、特例有限会社を存続会社とする吸収合併は許されません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律37条)。

本稿では、原則として株式会社による合併を解説します。

清算中の株式会社も存立中の会社を存続会社とする吸収合併または新設合併が可能です(474条1項)。更生手続き中の会社、再生手続き中の会社も合併は可能です(会社更生法45条1項7号、民事再生法41条1項1号参照)。

第4 合併の対価

合併においては、消滅会社の株主に対して、合併対価として、存続会社・新設会社の株式等が交付されます(753条1項2号、753条1項6号8号)。

吸収合併の場合、合併対価は存続会社の株式に限られず、社債、新株予約権、新株予約権付社債、金銭等を対価とすることも可能です(対価の柔軟化)。

金銭のみを合併対価とするものを交付金合併、存続会社の親会社の株式が交付されるものを三角合併といいます。

合併対価がない無対価合併も許容されており、親会社による子会社の合併、子会社同士の合併などに用いられています。

第5 三者間合併

1 概要

同日に、3社以上が合併することも可能です。

もっとも、法的には、各2当事会社間の合併として処理されます。例えば、A社B社C社が合併し、A社が存続会社となる場合、A社とB社の吸収合併、A社とC社の吸収合併に分けて処理されます。 

2 適用場面

合併は、グループ外の会社との間の経営統合や、グループ内の再編に用いられます。もちろん、企業買収の手法としても利用されます。直接買収対象会社を買収会社と合併させるのではなく、買収のための特定目的会社(SPC:Special Purpose Company)が対象会社株式を取得した後に対象会社と合併する例が多くあります。

合併については、前述のとおり、対象会社の権利義務が包括的に承継されるために、対象会社に不採算事業や不良資産がある場合、簿外債務が存在する可能性がある場合には適切な手法ではありません。そのような場合には、対象会社から会社分割や事業譲渡により事業を切り分け、その事業のみを買収することが一般的です。

第6 合併のメリット・デメリット

1 メリット

⑴ 組織再編税制の適用がある

株式譲渡や事業譲渡、自己株式の取得などのM&Aは、組織再編税制の適用対象とならないのに対し、吸収合併、会社分割、株式交換については、組織再編税制の適用対象となります。吸収合併など、組織再編税制が適用されるM&Aを選択すると、一定の場合に課税の繰り延べが認められるというメリットがあるといえます。

⑵ 被合併法人が合併法人と同一の法人となる

 合併では被合併法人は解散し、会社の権利義務が清算手続を経ることなく存続会社または新設会社に包括承継され、同一の法人となります。そのため、合併法人は、被合併法人の事業を完全に支配することができます。また、被合併法人のノウハウを承継することができるうえ、企業の規模が大きくなることによって、市場での影響力が強まることが期待できます。

2 デメリット

⑴ 簿外債務が存在するおそれ

 合併法人は被合併法人の債務も含めて包括的に承継するので、被合併法人に隠れた債務(簿外債務)があった場合、それも含めて引き継がなければなりません。

⑵ 許認可の消滅

 合併においては、被合併法人は解散することになるので、被合併法人が有していた許認可は原則として消滅します。消滅会社が何らかの許認可を要する事業を営んでいる場合には、その許認可を承継あるいは新規取得するために一定の手続が必要となる場合が多いので、許認可の種類に応じ根拠法令を個別に検討する必要があります。

⑶ 労働環境を統合する必要がある

 合併法人と被合併法人の労働環境を統合するために、労働協約を統一したり、就業規則を変更する必要が生じます。

⑷ 持ち株比率の希釈

 合併においては、原則として存続会社の株式を対価とするため、持ち株比率に変化が生じるというデメリットがあります。

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