加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく行政指導

 

 公正取引委員会は、2025年3月28日、フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下「フリーランス法」といいます。)22条に基づき、45名の事業者に対して、契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方等の是正を求める指導を行いました[1][2]

 同法に基づく行政指導の実施は、2024年11月にフリーランス法が施行以来、初めてのことです。

1 行政指導の経緯

 公正取引委員会、中小企業庁、及び厚生労働省は、合同で、2025年2月5日から同年3月5日までの間、フリーランス法違反又はそのおそれのある事実を発見し、個々の発注者に指導や勧告を行って是正させることを目的として、フリーランス法に基づき、発注者である企業を対象に調査を実施しました。

 調査方法としては、下請法の定期オンライン調査と同様で、設問内容や聞き方もほぼ同等のものでした。

2 指導の概要

 ⑴指導の対象となった企業

 指導の対象となったのは4業種(ゲームソフトウェア業、アニメーション制作業、リラクセーション、フィットネスクラブ)45社です。

 ⑵指導の対象となった違反行為の具体例

 ①報酬額など取引条件の明示義務(フリーランス法3条)違反

 オンラインゲームのイラスト制作やアニメ作品の制作業務の委託取引で、発注者側が給付を受領する期日や報酬額を示していない事例が指導の対象となっています。

 具体的には、

(ⅰ)個々の業務委託における共通事項を基本契約書にまとめている場合、個々の契約書においてその基本契約書との関連性について記載を欠いている事例

(ⅱ)報酬の支払期日を「翌月10日まで」と記載し、具体的な日を特定していない事例

等が指導の対象となっています。

(ⅱ)については、業務委託事業者が特定受託事業者に対して支払う報酬の支払いの期限を定めたものであって、フリーランスにとっては支払期日を具体的に特定できないという問題があるためフリーランス法3条違反となります[3]

 業務委託事業者としては、支払期日を定めたつもりであっても、支払期限を定めたこととなっており、気づかないままフリーランス法3条違反となっている場合もありえるかと思います。

 ②給付を受領した日から60日以内に報酬を支払わない等の「期日における報酬支払い義務違反」の疑い(フリーランス法4条)

 フィットネスクラブがSNSへの動画投稿業務に関し、報酬の支払期日を「請求書受領月の翌月末日」と設定していた事例は、フリーランス法4条に違反する可能性がある事例として指導の対象となっています。

3 実務対応

 今回の行政指導を踏まえ、発注者側の企業としては次のような対応をとることが考えられます。

 まず、ガイドライン(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方)等によりフリーランス法の解釈を再度確認し、遵守体制を整備することが考えられます。

 具体的には、下請法とフリーランス法の両法律に対応する発注書雛形や説明資料・マニュアルの作成・社内周知が必要となるでしょう。

 また、今後も定期的に行われると考えられる調査において、虚偽の回答が許されないことは当然の前提としつつ、公正取引委員会等の誤解を招きかねないような選択肢を安易に選択することのないよう、細心の注意を払うことが必要であると考えられます。

 加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に企業法務に関するご相談・ご依頼をお受けしております。



[1](指導及び助言)

第二十二条

 公正取引委員会及び中小企業庁長官並びに厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、業務委託事業者に対し、指導及び助言をすることができる。

[2] 「指導」(22条)の性質ですが、法的拘束力はなく、これに応じるか否かは名宛人の任意に委ねられています。

[3] 支払期日の記載方法については、下請取引適正化推進講習会テキスト(令和6年11月)98ページを参照。

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