加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」所在不明株主3-所在不明株主の株式売却許可申立制度②

【目次】

 1 所在不明株主の問題

2 所在不明株主の株式売却許可申立制度

 3 経営承継円滑化法の特例

 4 その他の方法(スクイーズ・アウトの手法)

エ 【要件④】申立てにつき、取締役全員の同意があること(取締役が2人以上の場合に限る。)(会社法197条2項第2文)

(ア)意義

会社に取締役が2人以上いる場合には、その全員の同意によって申し立てを行う必要があります。

(イ)疎明方法

取締役会設置会社の場合には、取締役会議事録の写しが疎明資料となります。

また、取締役会非設置会社の場合においては、各取締役から徴求した同意書をもって疎明する等の方法が考えられます。

オ 【要件⑤】申立人(会社)が株式を買い取る場合には、申立人が、買取る株式の数および対価として交付する金銭の総額を定めたこと(取締役会設置会社の場合は取締役会決議により定める必要がある。)(会社法197条3項、4項)

(ア)意義

会社が買取人となる場合には、買取る株式の株数(種類株式発行会社においては、株式の種類及び種類ごとの数)と、株式の買取りをするのと引き換えに交付する金銭の総額を決定する必要があります(会社法197条3項)。

取締役会設置会社の場合、決定機関は取締役会です(会社法197条4項)。

(イ)疎明方法

取締役会設置会社においては、取締役会議事録の写しが疎明資料となります。

また、取締役会非設置会社においては、各取締役から徴求した同意書をもって疎明する等の方法が考えられます。

カ 【要件⑥】申立人(会社)が、対象株式の株主その他の利害関係人が一定の期間内(3か月以上)に異議を述べることができる旨及びその他法務省令で定める事項を公告し、かつ、対象株式の株主及び登録株式質権者に各別に催告したこと(会社法198条1項)

(ア)公告及び催告書の記載事項

公告及び催告書の記載事項は、以下のとおりです。

・対象株式の株主その他の利害関係人が一定の期間(3か月以上)内に異議を述べることができること(会社法198条1項)

・対象株式の売却をすること(施行規則39条1号)

・対象株式の株主として株主名簿に記載または記録がされた者の氏名または名称及び住所(施行規則39条2号)

・対象株式の数(種類株式発行会社にあっては、対象株式の種類及び種類ごとの数)(施行規則39条3項)

・対象株式につき株券が発行されているときは、当該株券の番号(施行規則39条4号)

なお、対象株式が共有(民法上の準共有)となっている場合には、会社法198条1項の「各別の催告」は、通常の通知・催告のように代表者に送るのみでは足りず、共有者全員に対して行う必要があります(会社法198条3項)。

(イ)疎明方法

公告については、官報公告の写しが疎明資料となります。

各別の催告については、「あて所に尋ねあたりません」という朱印が押されて郵便局から還付された封筒の写し、及び、その内容物たる催告書の写しが、疎明資料となります。

キ 【要件⑦】対象株式の売却価格が相当であること

(ア)意義

あくまでも「競売に代えて」行う売却であるため、裁判所からの許可を得るためには、競売をした場合に見込まれる売却価格と同程度以上の価格である必要があると解されています。

(イ)疎明方法

公認会計士の作成した株価算定意見書を疎明資料として提出することが一般的です。

なお、算定の基準時は、厳密には売却の法効果が生じた時点、すなわち、裁判所によって売却許可が下された時点ですが、実務では便宜上、直近年度の決算書類に基づいて株価算定意見書が作成されるのが通例となっています。

Ⅲ 審理・決定

(1)審理

売却価格の相当性に関しては、公認会計士等の専門家により作成された株価算定意見書等により疎明を行いますが、裁判所が必要と認めた場合には、株価の算定に関する知見を有する専門委員が審理に関与することもあります(非訟事件手続法33条)。

非上場株式の算定にあたり、不明株主の株式売却許可を得、かつ、可能な限り買取人(会社等)の経済的負担を軽くするという観点からは、弁護士及び公認会計士と連携し、非上場株式の算定に関する近時の裁判例の動向や象株式の特性を適切に考慮した株価算定意見書を用意することが有益といえます。

(2)決定

審理の結果、許可決定が下された場合には、当該決定に基づく売却により所在不明株主は株主の地位を失い、株式を取得する者(会社)は、本店所在地を管轄する法務局に供託する方法により売買代金の支払いを行います(民法495条1項)。

却下決定が下された場合には、申立人のみが、2週間の不変期間内に即時抗告をすることが可能です(非訟事件手続法66条2項、67条1項)。

<続く>
「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」所在不明株主4-経営承継円滑化法の特例とその他の方法

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