加藤&パートナーズ法律事務所

加藤&パートナーズ法律事務所

法律情報・コラム

法律情報・コラム

「会社内部紛争を防止するための非上場会社の株主管理・株主対策」譲渡制限株式2-譲渡制限株式を譲渡する手続①

【目次】

 1 譲渡制限株式の落とし穴

2 譲渡制限株式を譲渡する手続

 ➡Ⅰ 手続の流れ

 Ⅱ 譲渡等承認請求・買取請求

 ➡Ⅲ 承認・不承認の決定

 Ⅳ 不承認通知の期間制限と「みなし承認」

  Ⅴ 買取の決定

  Ⅵ 買取通知・供託証明書の交付の期間制限と「みなし承認」

  Ⅶ 売買価格の協議

  Ⅷ 裁判所による価格決定

Ⅰ 手続の流れ

譲渡等承認請求がなされた場合の手続の流れは、以下フロー図のとおりです。

Ⅱ 譲渡等承認請求・買取請求

(1)譲渡等承認請求

譲渡等承認請求とは、譲渡人による譲渡承認請求と譲受人による取得承認請求とを併せた総称です(会社法138条)。

譲渡承認請求とは、譲渡人が会社に対して株式の譲渡を承認するか否かの決定を求める請求で、①譲渡する株式の数(種類株式発行会社の場合、譲渡制限株式の種類及び種類ごとの数)、②株式を譲り受ける者の氏名または名称を明らかにする必要があります(会社法136条、138条1項イ、ロ)。

一方の取得承認請求とは、譲受人が会社に対して株式の取得を承認するか否かの決定を求める請求で、原則として譲渡人と共同で行う場合にのみ認められています(会社法137条2項)。

実務上は、譲渡人・譲受人の連名で譲渡等承認請求を行うのが一般的ですが、例外として譲受人のみで取得承認請求が認められる場合があります(会社法施行規則24条)。

(2)買取請求

譲渡等が承認されない場合、譲渡等承認請求者は、会社または会社が指定する者(指定買取人)に株式買取を請求できます(会社法138条1号ハ、2号ハ)。

この買取請求は譲渡等承認請求と同時に行うことが可能であり、実務上は、承認されない場合の買取請求を譲渡等承認請求書に記載するケースが一般的です。

Ⅲ 承認・不承認の決定

譲渡等承認請求を受けた会社は、取締役会決議(取締役会非設置会社では株主総会の普通決議)により、譲渡等を承認するか否かを決定します(会社法139条1項)。

Ⅳ 不承認通知の期間制限と「みなし承認」

譲渡等承認請求がなされた場合、会社は承認または不承認を決定し、譲渡等承認請求者に対して、その決定内容を通知する必要があります。

注意すべきは、不承認の場合に、譲渡等承認請求の日から2週間以内に通知をしなければ、「みなし承認」(承認したものとみなされる法効果)が生じる点です(会社法145条1号)。

そのため、譲渡等承認請求がなされたときは、取締役全員から同意を得て取締役会の招集手続を省略する(会社法368条2項)等の方法を活用するなどして、迅速かつ機動的な対応が必要となります。

ただし、取締役会非設置会社の場合は、承認・不承認の決定機関が株主総会となるため(会社法139条1項)、非公開会社においては、定款で招集期間を短縮していない限り、株主総会の日の1週間前までに招集通知を発しなければ(会社法299条1項)手続が間に合わないリスクが高まります。

また、株主全員の同意がある場合には株主総会の招集手続を省略できますが(会社法300条)、株式譲渡の承認請求者本人から同意を得られる可能性は低い場合が多いです。

それゆえ、特に取締役会非設置会社の場合には、みなし承認を回避するためにスケジュール管理を徹底し、迅速な対応が求められます。

<続く>

加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法、会社内部紛争、事業承継、株主対策に関するご相談・ご依頼をお受けしております。

トップへ戻る