加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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「会社内部紛争を防止するための株主管理・株主対策」自己株式の取得

【目次】

1 自己株式の取得の概要

2 自己株式取得の手続に不備があった場合

3 自己株式取得の類型ごとの手続・留意点

Ⅰ 株主全員に譲渡の勧誘を行い合意取得する方法〔ミニ公開買付け〕

Ⅱ 特定の株主との合意による取得

Ⅲ 全株式譲渡制限会社における相続人株主からの取得

4 自己株式取得における財源規制等

Ⅰ 分配可能額の制限

Ⅱ 期末の財産状態の予測からの制限

1 自己株式の取得の概要

自己株式の取得とは、会社が発行済株式を買い戻す行為であり、株式の集約中対立する特定の株主から株式を取得する方法として、広く用いられています。この手続は、平成13年改正前商法では禁止されていました。しかし、産業界からの要請等を受けて、現在では一定の条件と手続を経れば、有償での取得が認められています(会社法155条、会社法施行規則27条)。なお、無償の自己株式取得は自由に行うことが可能です(会社法155条13号、会社法施行規則27条1号)。

2 自己株式取得の手続に不備があった場合

自己株式取得の会社法の規定は複雑で、上場・非上場企業の手法が混在しているため理解が難しく、特に中小企業では必要な手続や財源規制を守らずに株式を取得するケースも見られます。自己株式取得の手続に不備があった場合、事後的にその取得は無効と判断される可能性があり、加えて、関与した取締役などには刑事責任が問われるおそれもあります(会社法963条5項1号)。したがって、類型ごとの手続方法を遵守するだけでなく、財源規制等にも留意する必要があります。

3 自己株式取得の類型ごとの手続・留意点

Ⅰ 株主全員に譲渡の勧誘を行い合意取得する方法〔ミニ公開買付け〕

会社が全株主に譲渡の申込み機会を与え、希望する株主から株式を取得する方法で、「ミニ公開買付け」と呼ばれています。この方法では、まず株主総会の普通決議により取得枠(取得対象の株式数・種類・取得対価・期間)を設定し(会社法156条、309条1項)、その後、取締役会の決議を経て個別の取得条件を定め(会社法157条1項、2項)、全株主に通知します(会社法158条1項)。申込みがあった場合には、申込株式数に応じて比例配分で株式を取得します(会社法159条2項ただし書)。この方法は手続が比較的簡易で、株主に広く公平な譲渡機会を提供する点で透明性がありますが、特定の株主からその保有する株式を完全に取得したい場合には、予測が難しく、必ずしも適しているとはいえません。

Ⅱ 特定の株主との合意による取得

この方法には、ミニ公開買付けとは異なり、株主総会において特別決議が必要となります(会社法160条1項、156条1項、309条2項2号)。この際、売主となる特定の株主は、株主総会決議において議決権を行使することができません(会社法160条4項。ただし、当該特定株主以外の株主の全部が議決権を行使できない場合は除きます。)。また、この方法では全株主に譲渡の機会を与える必要がない代わりに、以下の点に留意が必要です。

① 売主追加請求権の存在

全株式譲渡制限会社の場合、他の株主が「売主追加請求権」を行使することで、自身も売却対象に加えるよう求めることができます(会社法160条3項、156条1項、会社法施行規則29条ただし書、28条)。

全株式譲渡制限会社では,会社は株主総会の日の1週間前までに売主追加請求権があることの通知を行うことが必要です(会社法160条2項、299条1項、会社法施行規則28条1号、2号)ので、これを隠して適法に決議を成立させることはできません。

② 売主追加請求権への対策

定款により排除できます。事後的にこの定めを設けるには、「全株主の同意」が必要であり(会社法164条1項、2項)、通常極めて高いハードルです。

売主追加請求権が行使される可能性があり、かつ追加売主からの買取りが困難な場合は、当初から自己株式取得ではなく、他の主体(代表者や後継者の個人)が買い取ることを検討すべきでしょう。

Ⅲ 全株式譲渡制限会社における相続人株主からの取得

特定の株主との合意による取得の中でも相続によって株式を取得した株主から自己株式を取得する場合には、売主追加請求権が認められません(会社法162条。これにより、特定の相続人との合意のみで取得手続を進めることが可能となります。ただし、会社が公開会社の場合や当該株主が当該相続株式について議決権を行使した場合はそもそも通常の手続(Ⅱ)が必要となりますので、注意が必要です。)。

また、相続税の申告期限から3年以内であれば、みなし配当課税が適用されないという特例措置もあり、相続人にとっても税務上のメリットがあります(租税特別措置法9条の7)。ただし、会社が公開会社である場合はそもそも利用できませんし、相続人が一度でも議決権を行使した場合には通常通りの手続が必要となるため、取得のタイミングには注意が求められます。

4 自己株式取得における財源規制等

Ⅰ 分配可能額の制限

自己株式の取得は、会社資金を株主に払い戻すものであるため、取得の対価は会社の「分配可能額」を超えてはなりません(会社法461条1項2号、3号)。分配可能額は、最終決算期の剰余金等を基に、自己株式の控除や臨時決算による調整を経て算定されます。

また、そもそも貸借対照表上の純資産が300万円未満の会社は、自己株式の取得や配当が認められません(会社法461条2項6号、会社法計算規則158条6号)。非上場企業では、簡易な目安として「剰余金が取得対価を上回っており、純資産が300万円以上」であれば自己株式の取得が可能と判断されるケースが多いです。

この分配可能額の制限に違反し、分配可能額以上の自己株式の取得がなされた場合には、業務執行者や議案提案者が、売主に支払った金銭の帳簿価額相当額を連帯して会社に支払う義務を負います(会社法462条1項1号、2号)。対立株主が存在する場合には、取締役の責任追及訴訟等に発展するおそれもあるでしょう。

Ⅱ 期末の財産状態の予測からの制限

取得日以後の決算において、分配可能額がマイナスとなる場合には、当該マイナス額または取株主に交付した対価の帳簿価額の総額とのいずれか少ない額を当該取得の業務執行者が会社に支払う義務を負うことになります(会社法465条1項2号、3号)。いわゆる「欠損填補責任」です。このようなリスクは、特に株主間に対立がある場合に顕在化しやすく、代表訴訟の対象となる可能性もあるため、あらかじめ十分な財務見通しをもって取得判断を行う必要があります。

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