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【目次】 1 取締役と会社の法律関係 2 貸与物 3 営業情報 4 取引先情報 |
1 取締役と会社の法律関係
取締役は、職務を行う中で、会社から携帯電話等の業務に必要な物品の貸与を受けるほか、会社製品の宣伝広告に使用しているSNSアカウントやパスワード情報等の営業情報、さらには取引先の名刺等の取引先情報など、さまざまな会社情報に接する立場にあります。そのため、取締役が辞任する場合には、これら職務に関連して管理・占有していた情報や貸与物をどのように処理するかが問題となります。
取締役と会社との関係は、法律上は委任関係(会社法330条)とされています。そのため、取締役は会社に対して報告義務(民法645条)を負うほか、委任事務の処理にあたって受け取った物を引き渡し、会社のために自己の名で取得した権利を会社に移転する義務を負います(民法646条)。
2 貸与物
携帯電話等の貸与物については、取締役という地位に基づいて貸与されたものである以上、特段の定めがない限り、辞任によりその占有権限は消滅すると考えられます。したがって、会社は、委任契約や貸借契約の終了を理由として、辞任取締役に対し貸与物の返還を求めることができると解されます。
3 営業情報
会社製品の宣伝広告のために使用されてきたSNSアカウントやパスワード情報についても、仮に名義が当該取締役個人であったとしても、実質的に会社業務の一環として開設・運営されてきたものであれば、会社に帰属すべき性質を有すると考えられます。そのため、会社は民法646条2項に基づき、会社のために取得された権利または地位として、これらの情報の開示や地位の移転を求めることができると解されています(同種事案につき大阪高判平成31年3月27日〔LLI/DB L07420102〕参照)。
4 取引先情報
取引先の名刺についても、職務遂行の過程で取得したものであると認められる場合には、委任事務の処理に関連して受領した物にあたるため、会社は民法646条1項に基づき、その引渡しを求めることができると考えられます。
以上のように、辞任取締役が職務に関連して管理・占有していた会社情報や貸与物は、委任関係の終了に伴い、原則として会社に引き継がれるべきものとして処理することができます。
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