加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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任期が満了する取締役の解任の可否

【目次】

 1 取締役の解任に関する株主提案権

 2 任期満了を控えた取締役についても解任議案を提出できるか

 3 裁判例からみた解任議案の意義

1 取締役の解任に関する株主提案権

取締役会設置会社において、株主が取締役の解任を株主総会の議題とすることを求める場合には、会社法上の株主提案権を行使することになります。

もっとも、この提案権を行使できる株主には、一定の要件があります。すなわち、①総株主の議決権の100分の1以上の議決権、又は②300個以上の議決権を有する株主である必要があります。これらの要件については、定款によって引き下げることができます。また、公開会社の場合には、原則として、当該議決権を6か月前から引き続き保有していることも必要となります。この保有期間についても、定款によって短縮することができます。

また、株主が提案権を行使する時期にも制限があります。取締役の解任に関する議案を株主総会に提出する場合には、原則として、株主総会の開催日の8週間前までにその請求をしなければなりません。ただし、この期間についても、定款によって短縮することが可能です(会社法303条2項、3項、305条1項、2項)。

このような要件を満たす株主から適法に提案がなされたにもかかわらず、会社がその議案を株主総会の議題として取り扱わなかった場合には、取締役等について過料の制裁が科されることがあります(会社法976条18号の2)。

2 任期満了を控えた取締役についても解任議案を提出できるか

ここで問題となるのは、対象となる取締役の任期が間もなく満了する場合であっても、株主がその取締役の解任を求める議案を提出できるかという点です。この点については、学説上、解任議案の提出を否定する見解と、これを肯定する見解とが対立しています。

否定説は、任期満了が間近に迫った取締役について解任決議をしたとしても、その取締役は定時株主総会の終結時に任期満了によって退任することになるため、あえて解任という手続を採る実益に乏しいと考えます。会社法332条1項も、取締役の任期について、定時株主総会の終結時までと定めています。

これに対して、肯定説は、任期満了の時点までは当該取締役が取締役としての地位を有している以上、その期間中に解任することにはなお意味があると考えます。さらに、解任による退任と任期満了による退任とでは、退職慰労金等の取扱いに違いが生じる可能性もあります。そのため、任期満了が予定されていることだけを理由として、解任議案の提出を否定することは相当ではないと考えられます。

したがって、任期満了を間近に控えた取締役についても、株主による解任議案の提出を認める肯定説が妥当です。

また、このように解する場合、当該取締役について任期満了による退任が予定されている場合に限らず、同じ株主総会において当該取締役の再任議案が別途提出されている場合であっても、解任議案を提出することが認められると解すべきです。

3 裁判例からみた解任議案の意義

任期満了を予定している取締役について株主が提出した解任議案が招集通知に記載されなかったことをめぐり、当該株主が会社に対して損害賠償を求めた事案があります(東京地方裁判所平成26年9月30日判決・金融・商事判例1455号8頁)。

同判決は、取締役の任期が株主総会の終結時に満了する予定であるという事情だけを理由として、その取締役について解任決議をする必要性が失われるものではないと判断しています。

その理由として、まず、取締役が解任されるか否かは、当該株主総会の時点におけるその取締役の権利義務その他の法的地位に関わり得ることを挙げています。

さらに、任期満了による退任と解任による退任とでは、その後の法的地位にも違いがあります。すなわち、定時株主総会の終結によって取締役が任期満了となった場合であっても、後任の取締役が選任されず欠員が生じたとき、又は法令若しくは定款で定められた取締役の員数を欠くこととなったときには、その退任した取締役は、新たな取締役が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有することになります(会社法346条1項)。

これに対して、解任決議によって退任した取締役については、このような権利義務は認められません。このように、いずれも「退任」という結果に至るものであるとしても、任期満了による退任と解任決議による退任とでは、法律上の効果・取扱いが異なります。

したがって、当該株主総会の終結時に任期が満了する予定であるという一事をもって、解任議案を提出し、これについて決議することの必要性が失われるとはいえません。この点からも、任期満了を控えた取締役について解任議案を提出することを認めるべきであり、同判決の判断は妥当なものと評価できます。

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