加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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取締役解任の有効性が否定される解任手続の瑕疵とは

【目次】

1 解任手続に瑕疵がある場合とは

2 解任決議が存在しないと評価される場面

3 解任決議そのものが無効となる場面

4 解任決議が取消しの対象となる場面

 取締役の解任は株主総会決議によって行われますが、手続の進め方に問題があると、解任そのものの効力が争われることがあります。ここでは、解任決議が「存在しないと扱われる場合」「無効となる場合」「取消しの対象となる場合」の3つに分けてみていきます。

1 解任手続に瑕疵がある場合とは

 取締役の解任は、解任理由の有無にかかわらず、株主総会決議によってすることが可能です(会社法339条1項)。そして、有効な株主総会決議によって解任されたのであればその解任自体は有効であって、解任に「正当な理由」がないときには、解任された取締役が損害賠償を求める余地が残るということになります(会社法339条2項)。

 ただし、解任手続に瑕疵があるときには、解任自体の有効性が否定されるケースがあります。具体的には、取締役を解任する株主総会決議が存在しないと評価される場合、無効となる場合、又は取消しの対象となる場合です。株主総会招集の前提となる取締役会決議等に瑕疵がある場合にも、解任の株主総会決議は取消しの対象となります。

2 解任決議が不存在と評価される場面

(1)決議が不存在となるケース

 株主総会が開催されていないにもかかわらず、決議が存在したかのように議事録だけが作成されているケースでは、決議が物理的に存在せず、株主総会決議は不存在となります。

 さらに、何らかの決議が存在するとしても、一部の株主だけが勝手に会合して決議した場合、大部分の株主に招集通知をしていない等招集通知漏れが著しい場合、取締役会設置会社において平取締役が取締役会決議に基づかず株主総会を招集して決議した場合等には、法的に決議不存在と評価されるケースもあります。

 これ以外にも、先行する取締役選任決議が不存在であり、その決議で選任された者を構成員とする取締役会で選定された代表取締役が、取締役会の決定に基づいて招集した株主総会で取締役解任決議がされたときには、いわゆる全員出席総会で決議されたなどの特段の事情がない限り、株主総会決議も不存在となります。

 株主総会決議が不存在となるケースでは、誰でも時期を問わず、訴訟によらずに主張できます。もっとも、訴えの利益が認められるときは、会社を被告として株主総会決議不存在確認の訴えを提起することができ(会社法830条1項、同法834条16号)、原告勝訴判決が確定した場合には第三者に対しても効力を有することになります。この効力のことを対世効といいます(会社法838条)。

 株主総会決議の不存在は、解任の場合に特有の問題ではありませんが、上記のようなケースでは、解任決議が不存在であるとして決議不存在確認の訴えが提起される可能性があります。

(2)解任決議と「訴えの利益」が問題になるケース

 ①解任決議不存在確認の訴え継続中、解任対象取締役の任期が満了となる場合

 解任決議との関係では、解任決議不存在確認の訴えの係属中、解任対象取締役の任期が満了した場合、訴えの利益は消滅すると判断した裁判例(福岡地判平成16年4月27日金判1198号36頁)があります。

 ただし、この裁判例は、後任取締役の選任決議が有効になされ、解任決議の効力が否定されたとしても解任対象取締役が権利義務取締役(会社法346条1項)となる余地がなく、そのほか訴えの利益を認める特別の事情もなかった事案です。このため、後任取締役を選任する決議が有効に確定していない場合等、解任決議の効力が否定されれば解任対象取締役が権利義務取締役となるようなときには、訴えの利益は否定されないと整理できます。

 ②不存在の株主総会決議の後に追認決議を行った場合

 会社が瑕疵のある決議を有効なものとするため、事後的に追認決議を行うケースがあります。しかし、追認決議の効力を先行決議の時点まで遡及させることができるかは、決議の内容によって結論が異なります。具体的には、追認決議の効力の遡及は第三者の法律関係を害さないなどの特段の事情がない限り認められないとした上で、解任決議に関して、追認決議の効力を遡及させると取締役の地位の喪失時期に影響を与え、追認決議までの取締役の報酬請求権を一方的に奪うことになるとして、遡及を否定した裁判例があります(東京地判平成23年1月26日判タ1361号218頁)。

3 解任決議そのものが無効となる場面

 株主総会決議の内容自体が法令に反するとき、その決議は無効となります。無効であることは、誰でも時期を問わず、訴訟によらずに主張できます。他方で、決議不存在の場合と同じく、会社を被告として株主総会決議無効の訴えを提起することもでき(会社法830条2項、同法834条16号)、原告勝訴判決が確定すれば対世効があります(会社法838条)。

 ただし、取締役の解任議案に関して、決議内容の法令違反を理由として決議が無効となる場面は、通常は想定しにくいでしょう。

4 解任決議が取消しの対象となる場面

(1)株主総会決議が取り消されるべきケース

 株主総会決議の招集手続又は決議方法に法令・定款違反又は著しい不公正がある場合(会社法831条1項1号)、決議内容に定款違反がある場合(同項2号)、特別利害関係人の議決権行使によって著しく不当な決議がされた場合(同項3号)には、株主、取締役、監査役等は、決議の日から3か月以内に決議取消しの訴えを提起可能です。

 これらの瑕疵は、決議不存在・無効の場合とは異なり、訴えによらなければ決議の効力を否定できません。そのため、原告勝訴判決が確定するまでは、決議は有効であることを前提として扱われます。原告勝訴判決が確定したときには、決議は遡って無効となり、対世効を有します(会社法838条)。

 ただし、招集手続又は決議方法の法令又は定款違反が問題となる場合には、その違反する事実が重大でなく、かつ決議の結果に影響を及ぼさないものでありときは、裁判所が請求を裁量棄却することがあります(会社法831条2項)。

(2)どのような事情が決議取消事由になるか

ア 招集手続に法令違反がある場合や招集手続が著しく不公正である場合

 取締役会設置会社において、取締役会決議を経ずに代表取締役が株主総会を招集したときには、招集手続の法令違反として取消事由となります。取締役会決議が事実として存在しなかった場合だけでなく、取締役会決議に瑕疵がある結果、その取締役会決議が無効となる場合も含まれます。

 招集通知漏れ、招集通知期間が法令又は定款で定めた期間よりも短い場合、招集通知・株主総会参考書類の記載不備等も、招集手続の法令違反として決議取消事由となります。加えて、招集通知漏れに関しては、その程度が著しい場合には決議不存在事由となるケースがあります。

 招集手続が著しく不公正とされる例としては、会社提案と株主提案が対立していたケースにおいて株主への情報提供にあたって株主提案側を著しく不利に取り扱う場合や、取締役会非設置会社で招集者が総会の議題を一部株主にだけ秘匿する場合等が想定されます。

イ 決議方法に法令違反がある場合や決議方法が著しく不公正である場合

 株主総会において取締役等に説明義務違反がある場合、定足数が足りないまま決議した場合、賛否の認定を誤って決議が成立した場合、議決権行使が妨害された場合、取締役会設置会社で招集通知に記載のない事項を決議した場合などには、決議方法の法令違反として決議取消事由となります。

 さらに、株主が出席しにくい場所や時刻に株主総会を招集した場合や、不公正な議事運営によって決議がされた場合等には、決議方法が著しく不公正であるとして決議取消事由となります。

ウ 特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議

 特別利害関係人とは、決議の結果について他の株主とは共通しない利害を有する者をいいます。株主としての立場とは異なる個人的利益に基づいて他の株主の犠牲のもとで議決権を行使するような場合に該当し得ます。

そして、会社法は、特別利害関係人による議決権行使を一律に禁止しているわけではなく、特別利害関係人の議決権行使によって著しく不当な決議がされた場合に限って、決議取消事由としています。

▼更に詳しいことをお知りになりたい方は書籍「リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任」(商事法務)をご覧ください。

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