加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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解任対象の取締役が解任手続の問題を事前・事後に争う方法

【目次】

1 解任対象の取締役が事前に解任を争う方法

2 解任された取締役が事後的に解任を争う方法

 取締役が解任を示唆されている局面では、解任後の救済だけでなく、違法な手続による解任を事前に止められるかも重要です。実際に解任された後には、決議の効力そのものを争う方法と、解任の効力は認めた上で金銭的な補償を求める方法とが考えられます。

1 解任対象の取締役が事前に解任を争う方法

 取締役が解任された場合、仮に解任手続に法律上の問題があったとしても、解任が有効であることを前提として、出社を拒絶されたり、報酬の支払いを停止されたりするなど、事後の法律関係・事実関係が積み上がっていくおそれがあります。

 また、解任手続に法律上の問題がある場合としては、株主総会決議が不存在、無効又は取り消されるべき場合が想定されます(取締役解任の有効性が否定される解任手続の瑕疵とは)。こうした場合、事後的には、解任決議をした株主総会決議の不存在確認(会社法830条1項)や取消しの訴え(会社法831条)を提起し、又は自らが取締役の地位にあることの確認を求める訴訟や仮処分によって争うことが考えられます。ただし、株主総会決議に取消事由があるにとどまる場合、裁判によって取り消されるまでは、その決議は有効なものとして扱われます。そのため、会社側が解任を前提とした人事発表や登記を済ませてしまうこともあります。

 このような事後の法律関係・事実関係が積みあがっていくことを防ぐため、解任を示唆された取締役としては、解任決議自体を防止して事前の地位を保全することが必要となるケースがあります

 具体的には、開催が予定されている株主総会の手続に法的な問題がある場合には、株主総会開催禁止仮処分や議決権行使禁止仮処分の申立てが選択肢になります。申立てに当たっては、違法な手続によって解任されるおそれだけでなく、事前に保全する必要性についても、資料に基づいて説得的に疎明することが求められます。ただし、ここでいう違法な手続は、解任に特有の問題である場合はそれほど多くありません。実務上は、解任とは別に株式の帰属に争いがある場合、代表者や取締役の地位に争いがある場合、又は解任議案以外にも共通する株主総会手続(その前提となる取締役会等を含みます。)に不備がある場合などが多いでしょう(取締役解任の有効性が否定される解任手続の瑕疵とは)。

 また、裁判外の対応として、解任対象取締役としては、違法な手続により成立した株主総会決議は事後的に不存在とされたり取り消されたりする可能性があることや、正当な理由のない解任の場合には会社が少なくとも残任期分の報酬について損害賠償義務を負う可能性があることを警告して、交渉をすることもあり得ます。

2 解任された取締役が事後的に解任を争う方法

株主総会決議の不存在確認、取消しを求めて解任の効力自体を争う方法

①株主総会決議の効力を訴訟で争う方法

 株主総会決議に瑕疵があるときには、株主総会決議不存在確認請求や株主総会決議取消請求訴訟によって(会社法830条、831条)、その決議の効力を争うことが可能です。

②取締役としての地位を暫定的に確保する仮処分

 株主総会決議不存在確認・取消請求訴訟の判決が確定するまでの間、取締役の地位を暫定的に回復するため、訴訟提起と並行して、民事保全法23条2項に基づく「取締役の地位を仮に定める仮処分」を申し立てることも検討する必要が生じます。

 この仮処分を申し立てるときには、いくつか注意点があります。

 まず、役員の地位を仮に定める仮処分における保全の必要性に関しては、実務上、民事保全法23条2項の「債権者」を会社と読み替え、たとえ被保全権利の存在が明白で、仮処分を申し立てた取締役に損害が生じるとしても、会社に損害が生じない以上は仮処分命令を発令できないという理解が示されています[1]。そのため、解任を受けた取締役としては、会社が自身の信用・経営能力に依存していることや、現行の取締役らでは放漫経営や金銭の使い込み等を行うおそれがあることなど、会社に損害が生じ得ることを疎明する必要が生じます。

 なお、解任登記の完了後は、公示された会社機関の現状変更を求めることになるため、保全の必要性がより厳格に判断される可能性が高いです。さらに、仮処分が認容されたとしても、株主構成からみて、その後に同一内容の選任決議がされることが明らかなときには、解任登記完了後の保全の必要性は否定されるという解釈が一般的です[2]。それゆえ、役員の地位を仮に定める仮処分の申し立ては可能な限り早期に行うことが重要となることが多いです。

解任に伴う損害について金銭賠償を求める方法

 解任自体は有効で、取締役を退任せざるを得ないことを前提として、会社に対して解任に伴う損害について金銭請求を行う方法があります。

 解任に「正当な理由」がないときは、取締役は会社に対し、解任によって被った損害の補填を求めることができます(会社法339条2項)。中心となるのは原則として残存任期に対応する役員報酬ですが、事案によっては役員賞与や退職慰労金などが損害に含まれることもあります。

再度の解任決議が予想されるものの解任決議の効力を争う実益がある場合

 株主総会決議に瑕疵があったとしても、会社が解任決議をやり直し、適法に解任に係る株主総会決議を成立させることができるときには、最初の決議の効力を争っても、最終的には退任せざるを得ないケースがあります。ただし、会社による解任決議のやり直しが想定される場合でも、別途、株主総会決議の瑕疵を争う実益があるケースがあります。

 例えば、解任に正当な理由が認められる事案では、会社法339条2項に基づいて残任期分の役員報酬相当額を請求しても認められませんが、解任に係る株主総会決議が不存在であるときには、決議のやり直しまでの間は取締役の地位を有することになるため、その期間の役員報酬を請求できます。

 このように、解任に正当な理由が認められるとしても、解任決議に瑕疵があるときには、会社法339条2項に基づく損害賠償請求と併せて、株主総会決議の瑕疵を争うことが検討されるケースもあります。

▼更に詳しいことをお知りになりたい方は書籍「リーガル・フロンティア 取締役の辞任と解任」(商事法務)をご覧ください。

加藤&パートナーズ法律事務所(大阪市北区西天満)では、関西を中心に会社法関係訴訟・非訟・仮処分、コーポレートガバナンスに関するご相談・ご依頼をお受けしております。



[1] 足立拓人ほか「役員の地位を仮に定める仮処分をめぐる諸問題」判タ1517号(2024年)38頁

[2] 足立拓人ほか「役員の地位を仮に定める仮処分をめぐる諸問題」判タ1517号(2024年)39頁

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