加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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会社内部紛争⑩-株主対株主・解散の訴え-

(2)解散の訴え

 50%ずつの議決権を有する二派の対立により取締役会や株主総会の開催すらままならなくなり、会社の意思決定ができなくなったような、いわゆるデッドロックの場面において、例は少ないですが、最終手段として、一方の株主から会社を被告として解散の訴えが提起されることがあります。

 「解散の訴え」は、総株主の議決権の10分の1(これを下回る割合を定款で定めることもできます。)以上の議決権を有する株主又は自己株式を除く発行済株式の10分の1(これを下回る割合を定款で定めることもできます。)以上の数の株式を有する株主が提起することができる訴えで、判決によって株式会社の解散を命じるものです。

 解散の訴えが認容されるためには、①解散という選択をすることにつき「やむを得ない事由」があり、かつ②ⅰ)株式会社が業務の執行において著しく困難な状況に至り、当該株式会社に回復することができない損害が生じ、又は生ずるおそれがあるか(1号事由)、あるいはⅱ)株式会社の財産の管理又は処分が著しく失当で、当該株式会社の存立を危うくするといえること(2号事由)が必要です。

①「やむを得ない事由」には、株主間の不和等を原因として、Ⅰ業務継続が困難な状態に陥っており、解散が唯一最後の手段である場合や、Ⅱ多数派株主の不公正かつ利己的な業務執行により、少数派株主がいわれのない不利益を被っており、このような状態を打破する方法として、解散以外に公正かつ相当な手段がない場合の2つがあると解されています。

②ⅰ)1号事由が認められるためには、取締役間に分裂を生じて業務に停滞を生じているといっただけでは足りず、たとえば株主も取締役も等分に対立していて、取締役の解任・選任等を行ってみてもその停滞を打開し得ないような状態にあることを要し、かつ、かかる膠着状態が、会社に回復できない損害を被らせるおそれがあることを要するとし、会社が営利法人として存在することがほとんど不可能であるような状態にならなければならないと解されています。

 また②ⅱ)2号事由が認められるためには、取締役による会社財産の不当な流用・処分などがあって、取締役が多数派株主を背景としているなど、他の方法では誤った経営ないし非行を是正することが期待できない場合であること要し、かつ、かかる誤った経営ないし非行が会社を破綻せしめるほどのものであることを要すると解されています。

 解散の訴えを認容した裁判例の大多数は、上述したデッドロックの状態であって、中小規模の同族会社においてデッドロックの状態に至った場合には、裁判所は概ね解散請求を認容する傾向にあります。

 一度解散の訴えが認容されてしまうと、継続企業価値を有する会社としては大きな損失となりますので、会社の存続を望む株主としては、デッドロックの状態にならないための予防策を事前に講じておく必要があります。

<続く>

会社内部紛争①-会社内部紛争の4つの類型-

会社内部紛争②-取締役対会社・役員報酬等を巡る紛争-

社内部紛争③-取締役対会社・取締役の地位、解任を巡る紛争-

会社内部紛争④-取締役対会社・責任追及を巡る紛争-

会社内部紛争⑤-株主対会社・経営権獲得を巡る紛争-

会社内部紛争⑥-株主対会社・会社運営の適法性、妥当性確保のための紛争-

会社内部紛争⑦-株主対取締役・取締役解任の訴え-

会社内部紛争⑧-株主対取締役・株主代表訴訟-

会社内部紛争⑨-株主対株主・株主権の帰属を巡る紛争-

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