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法律情報・コラム

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コーポレート・ガバナンス入門24 -社外取締役とは何なのか?-

社外取締役の数が激増しています。

コーポレート・ガバナンス元年と言われる2015年の前年である2014年の東証一部上場会社の社外取締役の数は2462人であったところ、2022年には東証プライム市場において6998人まで増加しています(日本取締役協会「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」 (2022年8月1日)。

https://jacd.jp/news/opinion/cgreport.pdf

増加した理由は、2015年にコーポレートガバナンス・コードが制定されたことにあります。

取締役会をいわゆるマネジメント・ボードからモニタリング・ボードへ転換し、取締役会の監督機能を強化するためには、経営陣から独立した社外取締役を増員しなければならないという考え方によるものです。

社外取締役がCEO以外のほとんどの取締役を占める米国や約半数を占める例が多いといわれる英国など"国際標準"からすると社外取締役を増員する必要があったのです。

実際に、機関投資家・議決権行使助言会社は、社外取締役の人数を議決権行使において重視しています。

2021年コーポレートガバナンス・コード改訂では、プライム市場では3分の1以上、その他の市場では2名以上の独立社外取締役の選任を求められています。さらにはプライム市場では過半数、その他の市場で3分の1の選任も推奨されています(原則4-8)。

その結果、プライム市場上場会社において2名以上独立社外取締役を選任している会社は99.2%、3分の1以上は92.1%、過半数は12.1%まで増加しています(東証「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2022年7月14日時点)」)。

nlsgeu000006jrqr.pdf (jpx.co.jp)

ここで、「独立社外取締役」という表現が出てきます。

単なる社外取締役とどう違うのでしょうか。

社外取締役というのは、会社法で規定されています。

会社法上、以下のとおり、会社で業務を執行していた取締役などは社外取締役に就任することはできません。

大分ややこしいので、読み飛ばしていただいても構いません。

① 現在及び就任前10年間、当該会社または子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他使用人経験者は不可(2⑮イ)

② 就任前10年以内に当該会社又は子会社の取締役(業務執行取締役等であるものを除く)、会計参与、監査役であった者は、当該職への就任前10年間当該会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他使用人経験があれば不可(2⑮ロ)

③ 当該会社の自然人である親会社等又は親会社等の取締役、執行役、支配人その他使用人は不可(2⑮ハ)

④ 当該会社の親会社等の子会社等(姉妹会社)の業務執行取締役、執行役、支配人その他使用人は不可(2⑮ニ)

⑤ 当該会社の取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人又は自然人である親会社等の配偶者又は2親等内の親族についても不可(2⑮ホ)

前回説明したとおり監査等委員会設置会社、指名委員会設置会社については制度上最低2人の社外取締役を選任する必要がありますが、令和元年会社法改正により監査役会設置会社であっても上場会社は社外取締役の選任が義務化されました(327の2)。

一方の「独立社外取締役」というのは、東証によるものです。

東証は、「上場管理等に関するガイドライン」(Ⅲ5⑶の2)において、独立性の基準を定めています(東証「独立役員の確保に係る留意事項」参照)。

nlsgeu000006lplx.pdf (jpx.co.jp)

例えば、会社の主要な取引先関係者や会社から多額の財産を得ている者を排除するなど会社法上の社外性の要件より厳格な定めとなっています。

これを踏まえて、コーポレートガバナンス・コードにより上場会社は自社の独立性基準を策定・開示することが求められており(原則4-9)、その独立性基準を充たす社外取締役が独立社外取締役ということになります。

そして、コーポレートガバナンス・コードは独立社外取締役に以下の役割を求めています。


【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】

上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。

(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成 長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと

(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監 督を行うこと

(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること

(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステーク ホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること


とくに、MBOや親子会社間の取引等の会社と経営陣との利益相反が考えられる場面、その他株主の利益が損なわれるおそれがある場合において、社外取締役の役割が期待されています。

コーポレートガバナンス・コードより詳しく社外取締役に求める役割を述べているものとして、経産省「社外取締役の在り方に関する実務指針」(社外取締役ガイドライン)があります。

20200731004-1.pdf (meti.go.jp)

日弁連「社外取締役ガイドライン」もありますので紛らわしいですが、日弁連の方は「法律専門家の団体である当連合会が,取締役の善管注意義務の法的分析・整理を踏まえ,社外取締役への就任から退任まで,社外取締役が果たすべき役割等についてのベストプラクティスをガイドラインとしてコンパクトに取りまとめ」たものですから、少し趣が違います。

社外取締役ガイドライン (nichibenren.or.jp)

経産省の方に戻りますが、そこには5つの"心得"が力強く記されています。

《心得 1》社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である。その中核は、経営を担う経営陣(特に社長・CEO)に対する評価と、それに基づく指名・再任や報酬の決定を行うことであり、必要な場合には、社長・CEO の交代を主導することも含まれる。

《心得 2》社外取締役は、社内のしがらみにとらわれない立場で、中長期的で幅広い多様な視点から、市場や産業構造の変化を踏まえた会社の将来を見据え、会社の持続的成長に向けた経営戦略を考えることを心掛けるべきである。

  

《心得 3》社外取締役は、業務執行から独立した立場から、経営陣(特に社長・CEO)に対して遠慮せずに発言・行動することを心掛けるべきである。

  

《心得 4》社外取締役は、社長・CEO を含む経営陣と、適度な緊張感・距離感を保ちつつ、コミュニケーションを図り、信頼関係を築くことを心掛けるべきである。

  

《心得 5》会社と経営陣・支配株主等との利益相反を監督することは、社外取締役の重要な責務である。

そこには、「中核は、経営を担う経営陣(特に社長・CEO)に対する評価と、それに基づく指名・再任や報酬の決定を行うことであり、必要な場合には、社長・CEO の交代を主導することも含まれる。」とちょっと物騒なことが記されています。

社外取締役には、会社経営経験者、弁護士、会計士、税理士、元官僚、学者などが選任されています。芸能人が就任して騒がれているケースもあります。

経産省が考える社外取締役像が正解とするならば、社外取締役の皆様には相当な覚悟をもって頂く必要があるようです。

加藤真朗

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