加藤&パートナーズ法律事務所

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法律情報・コラム

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コーポレート・ガバナンス入門2 -アベノミクスとコーポレート・ガバナンス改革-

 激戦の自民党総裁選が終わり、岸田内閣が発足しました。

 岸田新総理は、新自由主義的政策からの転換、分厚い中間層を創出するための所得の再分配などといった「新しい資本主義」を掲げています。

 安倍政権下では、企業業績、雇用、株価を改善したものの、中小企業や従業員には恩恵が少なく格差が拡大したとの批判に応えたものでしょう。

 前回軽く触れたように、近年のコーポレート・ガナバンス改革はアベノミクスの産物です。低迷していた企業業績を改善し、稼ぐ力を取り戻すためのものです。簡単に言うと、経営者が適切なリスクテイクをして稼げるような仕組みを構築しようとしたのです。

 そこで大きな役割を期待されたのが株主である投資家と社外取締役です。

 前者への期待とは、会社のいわばオーナーである投資家が、経営者に任せっきりにするのではなく、良い意味で口を出す、関与することによって、会社の稼ぐ力の向上を図っていこうとするものです。

 社外取締役への期待というのは、取締役会への期待と置き換えることもできます。会社法上、社長・CEOを選び、監督すべきは取締役会です。業績を上げられない社長・CEOをやめさせるのも取締役会の仕事です。ところが従来は、代表取締役社長をトップとし、その指揮下の取締役で取締役会が占められていたため、取締役会の監督機能が十分に果たされていなかったとされます。そこで、社内出身の取締役ではなく、社外の人材を取締役に選任し、取締役会の監督機能を向上させ、それによって会社の稼ぐ力を強めていこうとしたのです。

 いわゆる"マネジメント・ボードからモニタリング・ボードへ"という流れです。

 先程、「稼ぐ」、「稼ぐ」と連呼はしましたが、求められているのはあくまで"適切なリスクテイク"であって、ギャンブルではありません。「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため」のコーポレート・ガナバンス改革なのです。

 安倍政権下におけるコーポレート・ガバナンス改革は、コーポレートガバナンス・コード&スチュワードシップ・コードという二つのコードによって進められました。

 前者は、上場会社向け、後者は機関投資家向けです。両コードとも法律ではありません。いわゆる"ソフトロー"ですので、必ず従わなければならないというものではありません。

 しかし、実際には、コーポレートガバナンス・コードは上場会社に大きな影響を与えています。このシリーズでも、何度も俎上にあげることになります。

 両コードによるコーポレート・ガナバンス改革が企業にどのような影響を与えたのかについて、データに基づく実証分析があります。旬刊商事法務に連載されていた宮島教授らによるものです(宮島英昭・齋藤卓爾「アベノミクス下の企業統治改革―二つのコードは何をもたらしたのか」商事法務2224号、2226号、2227号、2230号、2231号、2232号、2233号、2235号、2236号)

 ご興味のある方は是非ご一読ください。

加藤真朗

(続く)

コーポレート・ガバナンス入門1 -自民党総裁選とコーポレート・ガバナンス-

コーポレート・ガバナンス入門3 -ノーベル物理学賞と2021コーポレートガバナンス・コード改訂-

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