加藤&パートナーズ法律事務所

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会社法関係訴訟

会社法関係訴訟

はじめに

会社法に関わる訴訟・非訟・仮処分は、裁判の中でも専門的知識を要する分野であり、会社法及びその関連法令の最新の法改正や判例・裁判例の状況等を踏まえた対応が重要です。

経営権争い、支配権争いの場面においては、紛争が激化すると複数の会社法関係訴訟・ 非訟・仮処分等が断続的に係属することもあり、特に同族会社においては顕著な傾向にあります。

当事務所においては、役員の責任に関する訴訟をはじめ、多数の会社関係訴訟・非訟・ 仮処分の経験を蓄積しており、紛争化した案件においても、的確かつ最善のリーガルサービスをご提供する体制を整えております。

また、当事務所においては、商法学者も客員弁護士として所属しており、各弁護士にお いても、研究会への参加・論文執筆など、裁判実務のみならず理論面からの研鑽にも励んでおります。

以下では、代表的な会社法関係訴訟・非訟・仮処分につきその概要をご説明いたします。

会社法関係訴訟

役員の責任追及訴訟(株主代表訴訟)

コンプライアンスの重要性が益々高まるなか,役員(取締役,監査役,会計監査人等)の責任が追及される事案は決して少なくありません。会社による責任追及がなされない場合であっても,株主によって株主代表訴訟が提起され,役員の責任が問われる事案もあります。

例えば,役員の判断によって会社が行った多額の融資が回収不能となった場合,事業買収の対価が不当に高額であった場合,会社と取締役との利益が相反する取引が行われていた場合,取締役が競業取引を行っていた場合等には,役員の損害賠償責任等が問題となり得ます。

役員が株主代表訴訟で敗訴した場合には,巨額の賠償責任を個人として負うことになり,内容によってはD&O保険(役員責任賠償保険)の適用が否定されるケースもあることから,適切な訴訟対応は極めて重要です。

上場企業はもちろん,中小企業であっても特に内部紛争の一部として,株主代表訴訟が提起されるケースもあります。

当事務所は,役員側,会社側(株主側)双方にて,多くの役員の責任追及訴訟の経験を蓄積しております。

経営判断の誤りに基づく責任追及訴訟

取締役は,会社との委任関係にあり,会社に対して善管注意義務,忠実義務を負います。もっとも,取締役は経営のプロとして会社の経営について広範な裁量を有していると解されており,経営判断に失敗があった場合に直ちに事後的評価を基に結果責任を負わせると,過度に経営を萎縮させることとなります。

そのため,裁判実務上は一般的に,実際に行われた経営判断を前提として,経営判断の前提となる事実認識の過程における不注意な誤りの存否,事実認識に基づく意思決定の推論過程及び内容における著しい不合理さの存否が判断のポイントとなる傾向にあります。

監視・監督義務違反に基づく責任追及訴訟

取締役は,他の取締役の業務執行を監視する義務,従業員の職務執行の監督義務を負っており,他の取締役や従業員の違法不正な行為によって会社又は第三者が損害を被った場合には,監視・監督義務違反に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。

具体的な監視・監督義務の内容については,代表権限の有無,業務執行権限の有無,職務分掌の内容等により差異があり,実際になされた違法不正な行為の内容等も踏まえて義務違反が判断されることとなります。

競業避止義務違反に基づく責任追及訴訟

取締役が自己又は第三者のために競業取引(株式会社の事業の部類に属する取引)を行おうとするときには,取締役会設置会社においては取締役会の承認を,それ以外の会社では株主総会の承認を得る必要があります。

また,競業取引を行おうとする取締役は,その承認を得るに当たり,当該取引につき重要な事実を開示する義務もあります。

上記の承認を得ずに取締役が競業取引を行い,会社に損害が生じたときは,取締役は法令違反行為を行ったものとして任務懈怠責任を負い,その取締役が得た利益の額が会社の被った損害額と推定されます。

さらに,上記の承認を得ていた場合にも,取締役の行った競業取引によって会社に損害が生じた場合には,善管注意義務違反が認められる限り,任務懈怠責任を負うこととなります。

利益相反取引に基づく責任追及訴訟

①取締役が自己又は第三者のために会社と取引を行う場合を,利益相反取引の直接取引といい,②会社と取締役以外の第三者との取引であるが,会社が取締役の債務保証を行うなど,類型的に会社と取締役との利益が相反する取引を利益相反取引の間接取引といいます。

これらの利益相反取引については,取締役が会社の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図る可能性があることから,会社法上,取締役会設置会社においては取締役会の承認を,それ以外の会社では株主総会の承認を得る必要があります。

取締役が上記の承認を受けることなく利益相反取引を行い,会社に損害を与えた場合には,法令違反行為を行ったとして会社に対して任務懈怠責任を負うこととなります。

また,上記の承認を得ていた場合にも,取締役の当該利益相反取引により会社に損害が生じた場合には,当該利益相反取引を行った取締役,会社が当該取引をすることを決定した取締役,承認決議に賛成した取締役には任務懈怠が推定され,この推定が覆されない場合には,損害賠償責任を免れません。

さらに,自己のために利益相反取引の直接取引を行った取締役については,それによって会社に生じた損害につき無過失責任を負います。

株主代表訴訟

上記の取締役の各責任については,本来的には会社自身が追及すべきものですが,馴れ合い等によって,会社による積極的な責任追及がなされず,その結果,会社及びその所有者である株主の利益が害される場合があります。

そのため,株主が,会社の権利を行使して会社のために取締役の責任追及を行う訴訟を提起する制度があり,これが株主代表訴訟です。

1株以上の株式を有する株主は,公開会社であれば6か月前から(定款でこれを下回る期間を定めたときはその期間)株式を継続保有する場合,株主代表訴訟を提起できます。非公開会社であれば,継続保有要件は不要です。

株主が株主代表訴訟を提起しようとする場合には,会社に対し書面等で取締役の責任追及の訴えを提起するよう請求し(提訴請求),その請求の日から60日以内に会社が責任追及の訴えを提起しない場合に,株主代表訴訟を提起することができます。

なお,60日の経過によって会社に回復不能の損害が生ずるおそれがある場合には,例外的に提訴請求を経ることなく株主代表訴訟を提起することができます。

第三者の取締役に対する責任追及訴訟

取締役がその職務を行うについて悪意又は重過失があったときは,当該取締役は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

当該責任は,取締役の第三者責任と言われ,会社自身に対する契約上又は不法行為に基づく責任追及では会社の無資力等を理由に救済を得られない場合に,第三者が取締役個人の責任追及するための手段として利用される傾向にあります。

また,不実の情報開示を行い,第三者に損害が生じた場合につき,取締役は,その行為をするにつき過失がなかったことを証明しない限り,これによって第三者に生じた損害につき賠償責任を負います。

具体的には,①取締役が株式等の引受人を募集する際に通知が必要な重要事項につき虚偽通知をした場合,または,当該募集のための会社の事業等の事項に関する説明に用いた資料(目論見書等)に虚偽記載があった場合,②計算書類・事業報告及びこれらの附属明細書の重要事項に虚偽記載があった場合,③虚偽の登記を行った場合,④虚偽の公告を行った場合が法定されています。

取締役の地位等に関する訴訟

報酬・退職慰労金等の請求訴訟

取締役の報酬,賞与,退職慰労金等の,職務執行の対価として会社から支払われる財産上の利益については,その額,算定方法等を定款の定め又は株主総会の決議によって定める必要があります。

そして,取締役と会社との取締役任用契約及び上記の定款の定め又は株主総会の決議に基づき具体的な報酬等の請求権が発生した場合は,その内容は取締役と会社との契約内容となり,双方を拘束することとされています。

そのため,このような状況において会社が取締役の報酬や退職慰労金を支払わない場合には,取締役は会社に対し,報酬や退職慰労金の請求を行うことができます。

もっとも,当該紛争類型においては,取締役の地位にあるか否か自体に争いが生じたり,報酬等がどのように定まっていたか,減額や不支給につきどのような合意がなされていたか,報酬や退職慰労金を支給することを決定する株主総会決議があったか,仮に同決議がなかった場合にも,同決議に代わる全株主の同意があったか否か等が問題となることが多くあり,これらの点の主張・立証がどのように可能かが重要です。

不当解任された取締役の損害賠償請求訴訟

会社は,株主総会の普通決議によって,任期途中でもいつでも取締役を解任することができます。もっとも,解任された取締役は,その解任について正当な理由がある場合を除き,会社に対し,解任によって生じた損害の賠償請求が可能です。

ここに言う損害とは,基本的には取締役を解任されなければ残存任期中及び任期終了時に得ることができた利益(役員報酬等)を喪失したこととなります。

解任の正当な理由としては,法令・定款違反行為や,心身の故障により職務執行に支障がある場合,職務能力の著しい不適任等の場合は肯定される傾向にありますが,取締役の経営判断の失敗による場合等には,見解が分かれており留意する必要があります。

株主権確認訴訟等

会社の株主権の帰属を巡る紛争場面においては,株主が,自己が株主たる地位にあることの確認を求め,株主権確認訴訟を提起することがあります。

特に,会社の支配権を巡る争いが顕在化した最中においてなされることが多く,株主ないし株主と扱われていた者の相続の発生を契機として紛争化する事案もあります。

株式の譲渡手続に法律上の瑕疵等がある場合や,いわゆる名義株として,真実の出資者と株主名簿上の株主が乖離している場合などにおいて,株主権の存否が問題となるケースが多くあります。

株主であることを主張する側は,設立時や新株発行時に株式を引き受けたこと,又は他の株主から株式を承継取得したことを主張立証する必要があり,それを争う側は,これらを否定する事情や,その後に株主と主張する者が株主たる地位を失っていることを主張立証していくこととなります。

特に中小企業においては,株主を管理するための客観的資料が十分に作成されていなかったり,記載内容に疑義がある場合もあり,また過去の資料が散逸していることもあるため,株主の認定に困難を伴うケースも少なくありません。

また,株式の譲渡制限が付されているか及び株券発行会社であるか否か等により,株式譲渡における規律が異なるため,その点にも留意する必要があります。

必要に応じ,株主権確認訴訟とともに,株主名簿の名義書換請求訴訟,株券引渡訴訟等を併せて提起することが望ましいケースもあります。

新株発行等差止め・無効訴訟

新株発行等の差止め

会社が新株発行又は自己株式の処分(会社法上,これらを併せて「募集株式の発行等」といいます。もっとも新株発行との語が一般的であるため,以下では自己株式の処分と併せて「新株発行等」といいます。)を行う場合,当該発行等が法令若しくは定款に違反し,又は著しく不公正な方法によってなされる場合,これによって株主が不利益を受けるおそれがある場合には,不利益を予防するため,株主は新株発行等の差止めを裁判所に請求することができます。

新株発行等を巡る紛争は,経営陣ないし大株主と,対立する株主間で支配権争いが生じている場合に問題となるケースが多数です。

実務的には,差止訴訟を提起したとしても,新株発行等の効力が生じるまでに判決を得ることは事実上不可能であることから,株主は,新株発行等の差止めを求めて仮処分命令の申立てを行うこととなります。

争点となることの多い差止事由の代表例は,以下のとおりです。

  • 公開会社が,「特に有利な金額」を払込価額として新株発行等を行う事案において,株主総会の特別決議を欠く場合
  • 非公開会社において,募集事項の決定又はその取締役会への委任について株主総会の特別決議を欠く場合
  • 支配権の維持・争奪目的等の不当な目的が,資金調達等の必要性よりも優越し,新株発行の主要な目的である場合

これらの分野については判例・裁判例が蓄積されつつあり,判例・裁判例で示された規範や重視された事情を十分に分析しつつ,当該事案の特殊性も踏まえ,迅速かつ適切な対応が求められます。

新株発行等無効訴訟

既に払込みが実施され,新株発行等(自己株式の処分を含む)がなされた場合にも,重大な法令・定款違反が存在する場合には,効力発生日から公開会社は6か月,非公開会社は1年以内に新株発行等無効訴訟を提起することができます。

新株発行等の無効は,訴えをもってのみ主張でき,無効判決の確定により,将来に向かって新株発行等が無効であったことが対世的に確定されます。

新株発行等の無効事由は,取引の安定性等の見地から限定的に解されており,例えば公開会社において取締役会の決議なく新株発行した場合や,著しく不公正な方法により新株発行がなされた場合は,無効事由にはなりません。

無効事由が認められる一例としては,非公開会社において株主総会の特別決議なしに新株発行等がなされた場合,新株発行の差止め仮処分命令に違反して新株発行等がなされた場合,新株発行等の差止めの機会を与えるための募集事項の通知又は公告を欠き,かつ新株発行等差止請求が許容されなかったといえない場合などがあります。

新株発行等不存在確認訴訟

登記簿上等に新株発行の外観があり,または株主名簿上等に自己株式処分の外観があるにもかかわらずこれらの実体がないような場合には,新株発行等不存在確認訴訟を提起することができます。

当該訴えにおいては,出訴期間の制限はなく,不存在確認を求める訴えの利益がある限りは誰からでも提訴可能です。当該訴訟についても,不存在が確定した場合は対世的な効力を有します

株主総会決議取消し・無効確認・不存在確認訴訟

株主総会決議(種類株主総会決議を含みます。)に瑕疵がある場合,決議自体が存在していないにもかかわらず登記簿上の外形が整えられている場合などには,株主総会決議の瑕疵,効力,存否を訴えをもって争うことができます。

これらの訴訟は,大企業において総会での説明内容等の適切性が問題となる事案のほか,中小企業においても,内部紛争や支配権争いの場面で提起されることがあります。特に,中小企業においては会社法の規定を遵守した株主総会の運営・対応が不十分な企業もあり,ひとたび紛争化すると長期化するケースも少なくありません。

株主総会決議に関する訴訟も,判例理論が多数蓄積しており,近時の裁判例も含む裁判実務の動向も踏まえ,適切に対応する必要があります。

株主総会決議取消訴訟

株主総会決議において,

  • ①招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し,又は著しく不公正なとき
  • ②決議の内容が定款に違反するとき
  • ③決議について特別の利害関係を有する株主の議決権行使によって著しく不当な決議がなされたとき
には,株主及び取締役等は,会社を被告とする訴えにより決議の取消しを請求することができます。

上記の決議取消事由の瑕疵については,決議取消訴訟によらなければその決議の効力を争うことができません。決議取消訴訟は,決議の日から出訴期間が3か月に限定されているため,留意が必要です。

決議取消しの判決が確定した場合には,取消しの効果は第三者にも及び,原則として決議は遡及的に無効となります。

上記①のうち,招集手続の法令違反の代表例としては,取締役会設置会社において取締役会決議に基づかず代表取締役が株主総会を招集したこと,招集通知の送付もれ,招集の通知期間不足,招集通知の記載不備などがあります。

上記①のうち,決議の方法の法令違反の代表例としては,取締役の説明義務違反,議決権行使の妨害,定足数不足,賛否の認定の誤り,取締役会設置会社における招集通知に記載のない事項の決議等があります。

上記②の決議内容の定款違反の例としては,定款所定の員数を超える取締役の選任等があります。

上記③の特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議の例としては,裁判例上,責任を追及されている取締役が議決権を行使し責任の一部免除決議を成立させた例などがあります。

決議取消訴訟においては,決議取消事由が存在しても,その瑕疵が招集手続または決議方法の法令・定款違反に過ぎない場合,裁判所は,その違反事実が重大でなく,かつ,決議に影響を及ぼさないと認めるときには,決議取消しの請求を棄却することができます(裁量棄却)。

株主総会決議無効確認訴訟

株主総会決議の内容が法令に違反する場合には,決議は無効であり,訴えをもって決議の無効確認を求めることができます。

無効確認訴訟については提訴期間の制限はありません。また,無効確認判決が確定した場合,その判決は第三者にも対世的に効力を有します。

無効事由の一例としては,違法な内容の計算書類の承認決議,欠格事由のある者を取締役や監査役に選任する決議,株主平等原則に違反する内容の決議などがあります。

株主総会決議不存在確認訴訟

株主総会の決議が事実として存在しないにもかかわらず,決議があったように議事録が作成され,登記がなされている場合,株主総会決議は不存在となります。また,決議は物理的に存在しても,その瑕疵が著しく,法的に株主総会決議と評価できない場合にも,株主総会決議は不存在となります。

これらの場合には,原則として誰から誰に対しても決議の不存在を主張できるものの,画一的処理の観点から,原告勝訴の判決が確定した場合には第三者にも対世的に効力を有します。無効確認訴訟と同様に,提訴期間の制限はありません。

法的な瑕疵が著しく決議不存在と評価される場合の一例としては,招集通知もれが著しい場合,取締役会設置会社において平取締役が取締役会の決議に基づかず株主総会を招集した場合,存在しない株主総会によって選任されたとされている取締役により構成される取締役会により代表取締役とされた者が株主総会を招集し,全員出席総会である等の特段の事情もない場合などがあります。

組織再編の差止め・無効訴訟

組織再編とは,会社法の定める組織再編行為である,合併,会社分割,株式交換及び株式移転を指し,企業買収(M&A),企業グループ再編,事業再生等の目的で実施されます。

組織再編が実施されると,それを前提に様々な法律関係が積み重なり,安易に効力を覆した場合には取引等関係者の安定性が害されることとなります。

そのため,会社法は,手続に違法等の瑕疵がある組織再編を事前に防ぐ手段として,組織再編の差止めを,事後的に争う手段として組織再編の無効訴訟を認めています。

組織再編の差止め

組織再編が法令・定款に違反する場合,株主が不利益を受けるおそれがあるときは,株主は会社に対し,組織再編の差止めを請求することができます。

また,略式組織再編の場合は,上記に加え,組織再編対価の著しい不当性も差止事由となります。

組織再編の差止めについては,新株発行の差止めの場合と同様,効力発生までに本案判決を得ることが困難であるため,仮処分命令の申立てによって争われます。

※略式組織再編:吸収合併,吸収分割,株式交換を行う場合に,一方の会社(特別支配会社)が他方の会社の議決権の90%以上を有する場合,他方の会社の株主総会の承認決議を要しないとされており,このような場合を略式組織再編といいます。

組織再編無効訴訟

組織再編の無効は,法的安定性を維持する見地から,組織再編無効訴訟をもってのみ主張することができ,提訴期間は効力発生日から6か月とされています。

また,無効判決が確定した場合にも将来に向かって効力を有し,第三者との関係でも対世的に効力を有するものとされています。

提訴できる者は,組織再編の効力発生日に当事会社の株主,取締役,監査役,執行役,清算人であった者,存続会社・新設会社のそれらの者,破産管財人,組織再編について承認しなかった債権者とされています。

組織再編の無効事由は明文規定がなく解釈に委ねられており,一般的には重大な手続瑕疵がある場合に無効事由となると解されています。

計算書類等,会計帳簿,株主名簿の閲覧等請求訴訟

会社の株主が,会社に対し適正に監督権等を行使するためには,会社の経営状況,財務状況等に関する情報を入手することが重要となります。そのため,株主が一定の各要件をみたす場合には,計算書類等,会計帳簿,株主名簿の閲覧等の請求訴訟を提起することができます。

特に,会社において役員等の違法不正な行為が疑われる場合には,これらを一手段として,株主が情報を収集し,株主代表訴訟等の提訴や議決権行使に向けた判断を行うとともに,資料の獲得を目指すこととなります。

計算書類等閲覧等請求訴訟

会社は,各事業年度の計算書類(貸借対照表,損益計算書,株主資本等変動計算書,個別注記表)及び事業報告,並びにこれらの附属明細書を作成する義務があり,臨時計算書類も作成することができます。また,会社はこれらの書類を会社法の定めに従い備え置く義務もあります。

株主及び債権者は,会社の営業時間はいつでも,上記の計算書類等又はその写しの閲覧,謄本又は抄本の交付請求をすることが可能です。計算書類等が電磁的記録をもって作成されている場合にもこれに準じた請求が可能とされています。

これらの請求については,株主及び債権者が理由を明示することは不要です。

通常は,請求に応じ会社が任意に提供することが多いものの,任意提供がなされない場合には,訴訟において請求することが必要となります。

会計帳簿等閲覧等請求訴訟

総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主,または発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主は,会社の営業時間内はいつでも,会社の「会計帳簿及びこれに関する資料」の閲覧又は謄写の請求をすることができます。

閲覧謄写の範囲については見解の対立があるものの,限定的に解する見解を前提とした場合,会計帳簿とは,計算書類及びその附属明細書の作成の基礎となる帳簿(仕訳帳,総勘定元帳,各種補助簿),これに関する資料とは,会計帳簿作成の材料となった資料(伝票,受取証,契約書,信書等)とされています。

会計帳簿等の閲覧等請求を行うには,請求理由を具体的に明示する必要があり,閲覧等の対象とする会計帳簿等と,請求理由との間に関連性が必要です。

会計帳簿等の閲覧謄写においては,会社が閲覧謄写を拒絶できる事由が法定されており,請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき,請求者が当該会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み,又はこれに従事する場合等が挙げられています。

裁判上,会社がこれらの拒絶事由を主張立証した場合には,株主の請求は認められないこととなります。

株主名簿閲覧等請求訴訟

株主及び債権者は,会社の営業時間内はいつでも,株主名簿の閲覧又は謄写の請求を,株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは,これを法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求をすることが可能です。

この場合,請求者は,請求の理由を明示する必要があります。一例としては,少数株主権の行使に必要な株式数や議決権数を確保するための勧誘を行う目的,委任状による議決権の代理行使の勧誘(プロキシー・ファイト)を行う目的などがあります。

会社が任意に履行しない場合,拒絶する場合には,請求者としては訴訟提起することとなります。

会社は,株主名簿閲覧謄写の拒絶事由を主張することができ,請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行った場合等が法定されています。

会社法関係非訟

非訟事件とは,裁判所が判断を行う事件のうち,当事者の実体的権利義務を確定することを内容とする訴訟事件以外のものをいいます。非訟事件のうち,会社法の規定によるものを会社非訟事件といいます。

会社非訟事件は多岐にわたりますが,代表的なものに,株式価格を裁判所が決定する事件,少数株主が株主総会を招集することの許可を裁判所が判断する事件等があります。

以下では,主に紛争性が高い事件につき,会社法関係非訟事件の一部をご説明します。

株式価格決定申立事件

会社法の定める様々な場面において,会社等が株主(主に少数株主)の株式を買い取るケースがあります。このような場合に,買取りの当事者が株式の価格について納得できないときには,会社法の規定に基づき,その当事者は裁判所に対し,株式の価格決定の裁判を求めることができます。

少数株主側が,会社の示す買取株価を受け入れることができず,価格決定の裁判へと発展する例が多数です。

価格決定の裁判においては,株主側,会社側の双方から株価に関する専門家(主に公認会計士)の意見書が提出され,裁判所においても株価算定に関する専門委員が選任されるなどして,適正な株価につき激しく争われる傾向にあります。

特に,非上場会社の株価については,上場会社と異なり指標となる市場価格が存在せず,裁判例においても統一的な算定方法は示されていません。そのため,株価の算定方法を巡って争いとなるケースがほとんどです。

中小企業においては,経営者が,株式の額面価格や税務上の株価をもって適正な株価と認識していることがありますが,裁判における株価は,DCF法等の算定方法に基づいた,会社の財産状況や収益力等を踏まえた真の企業価値を示すものとして判断されることが大勢です。そのため,会社側の想定外の高額な株価が決定される例も少なくありません。

株式価格決定の裁判への移行が予測される事案においては,裁判手続となった場合にどのような株価が決定されるかを予測した上,会社側としても,株主側としても対応を検討する必要があります。

そのためには,株式価格決定の裁判例や理論の動向に精通し,かつ,公認会計士等の企業価値評価の専門家との連携が可能な弁護士に依頼することが重要です

株式売買価格決定申立事件

株式の譲渡につき会社の承認を要する旨の定款の定めのある会社,いわゆる非公開会社において,譲渡制限株式の譲渡を会社が承認しない場合には,会社は,自ら株式を買い取るか,指定買取人に買い取らせることが必要です。

この場合,売買の当事者は,裁判所に対し,売買価格決定の申立てを行うことができます。

また,相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対して,会社が当該株式の売渡しを請求することができる定款の定めがある場合には,会社は1年以内に当該承継人に対して株式の売渡請求をすることができます。

この場合においても,当事者は,裁判所に対し,売買価格決定の申立てを行うことができます。

さらに,スクイーズ・アウトの一手段として,会社の特別支配株主(原則として,議決権の90%以上を有する者)が,他の少数株主に対し,会社の取締役会の承認を得て株式の売渡請求を行う場合にも,当該請求により株式の売渡しを余儀なくされる株主は,売買価格決定の申立てを行うことができます。

株式買取価格決定申立事件

定款変更や,合併,会社分割などの組織再編行為に反対した株主,株主総会において議決権行使が許されなかった株主等が,会社に対し,会社法の規定に従い株式買取請求をした場合等において,会社と株主等の間で,買取価格につき協議が調わないときには,株主または会社は,株式買取価格の決定を裁判所に申し立てることができます。

各場合に,株式買取請求期間,買取価格の協議期間や申立期間等が法定されています。

株式買取価格決定事件は,大規模企業における組織再編において申し立てられることが多く,一般的にも知られるようになりましたが,大規模企業に限定されたものではありません。

特に,企業再編の場面においては,シナジー等の企業価値の増加の有無等に応じ,判例・裁判例の判断基準が定着しつつあり,これらに従い,裁判所が合理的な裁量のもと,公正な価格を決定することとなります。

少数株主による株主総会招集許可申立事件

株主総会は,取締役会設置会社においては,取締役会の決議に基づき招集決定がされ,代表取締役が招集手続を行います。

もっとも,招集されるべき株主総会の招集がなされない場合,また,株主が,取締役の解任を目的とする臨時株主総会を招集する場合などに,少数株主による株主総会の招集がなされることがあります。

主に,支配権争い,経営権争いの場面や,少数株主と経営陣の意見が対立している場面等で利用されることが比較的多くあります。

また,中小企業においては,取締役の地位に疑義が生じている場面において,招集権限の有無を巡って株主総会決議の有効性に疑義が生じる可能性がある場合に,株主の地位を兼ねる経営陣がこの方法を使って株主総会を招集することもあります。

総株主の議決権の3%以上の議決権を,6か月以上有する株主は,取締役(原則として代表取締役)に対し,招集目的を示して株主総会の招集請求をすることができます。なお,非公開会社では,株式保有期間の要件はなく,持株割合と保有期間の要件は,定款で引下げ・短縮が可能です。

この招集請求後,遅滞なく招集手続が行われない場合,または招集請求から8週間(定款で短縮可能)以内の日を株主総会の日とする招集通知が発せられない場合には,上記の招集請求を行った株主は,裁判所に対し,株主総会の招集許可を求める申立てが可能です。

株主総会検査役選任申立事件

会社自身,または総株主(議決権の行使できない株主を除く)の議決権の1%以上を有し,当該議決権を6か月前から引き続き有する株主(ただし,非公開会社の場合は保有期間の要件なし)は,株主総会に先立ち,株主総会の招集手続及び決議の方法を調査する検査役の選任を申し立てることができます。

基本的には,事後に,招集手続や決議方法の瑕疵を理由に,株主総会決議に関する訴訟が提起され,株主総会決議の効力が争われることを防ぐために,検査役選任の申立てがなされます。

裁判所により選任された総会検査役は,株主総会の議事の経過等を報告書に取りまとめ,DVD等の記録とともに裁判所に提出します。検査役の報酬は,会社が負担します。申立人が事前に予納し,事後的に報酬が決定した段階で会社に請求する扱いが一般的です。

業務執行検査役選任申立事件

総株主(議決権の行使できない株主を除く)の議決権の3%以上,または自己株式を除く発行済み株式の3%以上の数の株式を有する株主(いずれも割合は定款で引下げ可能)は,会社の業務執行に関し,不正の行為または法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由がある場合には,会社の業務及び財産の状況を調査させるための検査役(業務執行検査役)の選任の申立てを裁判所に対してすることができます。

業務執行検査役は,通常弁護士が選任され,必要な調査を行い,その調査結果を裁判所に対して報告します。

検査役の報酬については,株主が概算額を事前に裁判所に対し予納しますが,最終的には会社の負担となります。

業務執行検査役の選任権は,株主が会社の業務及び財産の状況を正確に把握し,株主価値の低下を防ぐとともに,株主の権利の適正な行使を確保することを目的とするものです。同権利は,株主が一定の要件をみたす場合に,計算書類や会計帳簿の閲覧等のみでは知り得ない会社の業務財産の情報を,中立的な専門家の調査により知ることを可能にするもので,株主としては活用の余地があります。

取締役会議事録閲覧謄写許可申立事件

取締役会設置会社の株主は,その権利を行使するため必要があるときは,営業時間内はいつでも,取締役会議事録の閲覧または謄写請求ができるのが原則ですが,監査役設置会社,監査等委員会設置会社,指名委員会等設置会社の場合には,裁判所の許可を得て,議事録の閲覧謄写請求が可能となっています。

もちろん,会社が任意で閲覧謄写に応じる場合には問題となりませんが,多くの会社は上記の裁判所の許可を要件とする場合に該当しますので,会社が任意に応じない場合には,株主は,取締役会議事録の閲覧謄写許可申立てを裁判所に対し行うこととなります。

また,株主以外にも,取締役会設置会社の債権者や親会社社員も,役員等の責任を追及するため必要があるときには,上記申立てを行うことができます。

なお,取締役会議事録を閲覧謄写することにより,会社に著しい損害を及ぼすおそれがあるときには,裁判所は許可をすることができません。

審理において主に問題となるのは,議事録の存否・特定,閲覧謄写の必要性(株主代表訴訟の提起のためなどが代表的ですが,一定程度具体的なものが必要と解されています),会社に著しい損害を及ぼすおそれの点です。

株主らとしては,役員の責任を疑うべき事情がある場合,株主提案等を検討している場合,議決権行使の方針を検討している場合等において,株主代表訴訟の提起の判断及び同訴訟における証拠取得,株主提案権や議決権の行使方針確定等のため,必要に応じ取締役会議事録閲覧謄写申立てを検討する余地があります。

商事仮処分

そもそも仮処分とは,本案訴訟の判決確定を待っていては,その間に既成事実が積み重なるなどして著しい損害が発生する場合において,裁判所の命令により,争いのある権利関係につき仮の地位を定めるもの等をいいます。商事事件においても,このような場合において仮処分が活用されることがあり,これを一般的に商事仮処分と呼びます。

仮処分事件は,その性質上,極めて迅速な対応が要求されるため,申立側においても,申し立てられた側においても,会社法や仮処分対応に精通した弁護士に依頼することが重要です。

商事仮処分については,類型が限定されているわけではありませんが,以下で代表的な類型につき簡単にご説明します。

なお,商事仮処分の類型の一つである新株発行差止仮処分については,会社法関係訴訟「新株発行差止め」の項で,組織再編の差止仮処分については,同「組織再編の差止め」の項をご参照ください。

職務執行停止・職務代行者選任仮処分

取締役を選任する株主総会決議が不存在であったり,瑕疵がある場合,また取締役に解任事由がある場合などには,これを争う株主や(元)取締役は,株主総会決議取消訴訟,同不存在確認,無効確認訴訟などを提起するか,取締役解任の訴えなどを提起することとなります。

しかし,これらの判決が確定するまでにも,瑕疵のある決議によって選任された取締役等が業務執行を行うことによって,会社の対外的信用が失墜したり,会社の重要財産が流出すること等によって著しい損害が生じる可能性があり得ます。

そのために,当事者の申立てによって,裁判所の仮処分命令により,取締役の職務執行を停止し,裁判所によって職務代行者の選任がなされる場合があります。主に,支配権争い,経営権争いの場面においてなされることが多数です。

仮処分命令は,職務執行を停止される取締役にとっては効果が強大なものですので,その要件である保全の必要性が厳格に判断されます。

また,裁判所への担保金の予納が必要であり,職務代行者を選任する場合には,職務代行者の報酬についても予納する必要がありますので,この点には留意する必要があります。

議決権行使禁止仮処分

株式の帰属や株式の発行の有無が問題となっている場合において,通常は株主権確認訴訟や新株発行無効訴訟等を提起することとなりますが,本案判決の確定まで待っていては,株主総会において真実の株主ではない者が議決権を行使し,不当な決議がなされるおそれがある場合があります。

このようなケースにおいて,当事者が申し立て,保全の必要性が認められる場合には,当該株主総会において株主権に争いのある株主の議決権行使を禁止するため,議決権行使禁止仮処分の命令がなされることとなります。

保全の必要性の判断においては,株主総会の決議事項が,取締役の選任議案である場合,組織再編・解散等,会社の基礎に重大な変更を及ぼす場合には,保全の必要性が肯定される傾向にあります。

議決権行使禁止仮処分についても,主に支配権争い,経営権争いの場面で申し立てられることが多数です。

他の仮処分と同様に,迅速な対応が要求され,申立人は担保金の予納が必要となる点にも留意が必要です。

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